地質学雑誌
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109 巻, 4 号
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  • 野村 律夫
    2003 年 109 巻 4 号 p. 197-214
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    20世紀を通じて日本の汽水湖の多くは人間活動によって大きく改変されてきた.このような汽水域の生物生態系に影響を与えたものとして,多くの人工構築物に加えて自然作用としての海水準変動があげられる.しかしながら,人間活動と自然との相互関係を実証した研究例は少ない.本論では,有孔虫によって20世紀の人間活動と自然の環境評価を大規模干拓工事の中止された中海で行なった.その結果,人間活動と自然変動が共に作用した場合,もっとも顕著な環境変化を起こすことを認めた.たとえば,1930年代の大規模浚渫工事は1940~1950年代の生物群を多様化させた.このとき日本海域における海水準が上昇し,中海の湖水循環が活発化している.さらに,1970年代の干拓工事で形成された水門や堤防は,ここで中海固有水(NPW)と称した水域の停滞性をさらに拡大させ,1980年代以降,水質の富栄養化を特徴づける有孔虫の発達をもたらした.
  • 栗原 行人, 堀内 誠示, 柳沢 幸夫
    2003 年 109 巻 4 号 p. 215-233
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    埼玉県岩殿丘陵地域に分布する中新世海成堆積岩類の岩相層序を再検討し,その下半部の珪藻および石灰質ナンノ化石層序を明らかにした.本地域の中新統は下位より,上唐子層,神戸層,根岸層(再定義),将軍沢層(再定義),鳩山層,今宿層に区分され,上唐子層と神戸層の間の関係が不整合と推定される以外はすべて整合一連である.根岸層および将軍沢層中に挟在する9枚の凝灰岩鍵層を記載した.珪藻化石層序学的検討の結果,上唐子層は北太平洋中新世珪藻化石帯区分におけるCrucidenicula kanayae帯からDenticulopsis lauta帯,根岸層および将軍沢層最下部はDenticulopsis praedimorpha帯最下部に属する.石灰質ナンノ化石層序学的検討の結果,根岸層下部はCN4帯,根岸層上部と将軍沢層最下部はCN5a亜帯に属する.神戸層基底に推定される不整合の年代は微化石データから中期中新世の15.1-15.4Maの極めて狭い年代範囲に絞り込むことができた.この不整合は中部一東北日本の中新統に広く認識される広域不整合と年代的に一致し,確実に対比される.
  • 亀井 淳志, 高木 哲一
    2003 年 109 巻 4 号 p. 234-251
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    福島県船引町周辺には阿武隈花崗岩類が分布し,岩相は斑れい岩類~花崗岩類におよぶ.これらの岩石は斑れい岩類,古期花崗岩類(長屋岩体・鹿山岩体・石森岩体),新期花崗岩類(青石沢岩体・三春岩体・初森岩体)に区分でき、この順に貫入する.古期花崗岩類は角閃石を含み弱い面構造を有するか,新期花崗岩類はカリ長石斑晶や白雲母を含み多くが塊状を呈する.花崗岩類は全てカルクアルカリ系列に属し,火山弧に産するI-type花崗岩の化学組成を有する.一方,斑れい岩類はソレアイト系列に属する.各花崗岩休および斑れい岩類は,バーカー図などにおいてそれぞれ異なる化学的性質を示す.また,長屋・鹿山・三春・初森の各岩体は約0.2~1.O×10-3SI unitの低い帯磁率を示すが,石森・青石沢の各岩体は約1.0~30.0×10-3SI unitの高い帯磁率を示す.斑れい岩類の帯磁率は約30.0~60.0×10-3SI unitとさらに高い.これら深成岩類の化学的性質および帯磁率の違いは,それぞれの岩体が異なるマグマから固結したことを示唆する. 花崗岩類の成因について,微量元素斑成による部分融解モデルの検討を行った.その結果,本地域の花崗岩類のマグマは,玄武岩質下部地殻が融解し,角閃石もしくは斜長石+ザクロ石を含む残存固相を形成しつつ発生したと判断された.
  • 中嶋 健, 檀原 徹, 岩野 秀樹, 山下 透
    2003 年 109 巻 4 号 p. 252-255
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Fission-track dating was carried out on zircon crystals in a pumice obtained from a tuffbed in the Katsurane Facies in the Tentokuji Formation at Hanekawa, Akita City. As a result, the first reliable radiometric age of 4.4±0.6 Ma (2σ) was obtained for the tuffbed. The result supports the correlation between the Katsurane Fades distributed on surface outcrops and that distributed in offshore sub-surface wells.
  • 中野 聰志, 赤井 純治, 苣木 浅彦
    2003 年 109 巻 4 号 p. VII-VIII
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    チリ共和国の最南端部・パタゴニア地域には、南部アンデス山脈の西側に沿って、中生代~新生代のバソリスが南北方向に続いている. その内側ほぼアルゼンチンとの国境沿いに、中新世の花崗岩質プルトン及び半深成岩が、点々と同じように南北方向に分布している(第1図). そのうちのパイネ国立公園に分布している花崗岩プルトンについては研究が進んでいる(Michael,1991)が、その南のバルマセーダ山の小岩体(第2図)についての詳細は不明である. そのバルマセーダ山東麓の船着き場近くから、閃長岩破片を採集した(第3図).
    閃長岩中アルカリ長石は、肉眼的には、中心部の半透明部(黒味を帯びる)を周辺部の相対的に薄い不透明部(やや肌色を呈する)が、脈状に入りつつ包んでいるように見える(第4図). 顕微鏡で観察すると、アルカリ長石粒子は、ほぼ均質に見える領域(実際は、クリプトパーサイト)とパッチ状(モザイク状)マイクロパーサイトの領域からなっている. 中心部は前者が支配的であり、周辺部は後者が支配的である. 中心部の顕微鏡的には均質に見える部分には、注意深く観察するとスパイク状のものが並んでいる. これを、X線マイクロアナライザーで観察すると、その模様が鮮明に見えてくるので、スパイクのひとつひとつが蝶 (butterfly) の形をしていることがわかる(第5, 6, 7図). 蝶の中心に位置している丸い粒子は、元素マッピング(第7図)と電子顕微鏡観察の結果、螢石であると同定できた(Nakano et al. ,2002).
    本来均質であったOr 35-40 Ab 64-59 An 1-1.5 程度のアルカリ長石が、離溶してクリプトパーサイトになり、さらにそれが螢石を中心にして粗大化した. パーサイト粗大化の初期記録が蝶組織であり、粗大化がさらに進むとパッチ状のマイクロパーサイトになる. クリプトパーサイト形成後、アルカリ長石中の弱線を通るfluid~solutionから螢石が沈澱したと考えられる. 問題は残るが、以上が、現在の長石研究の到達点から整理した蝶組織の形成過程である(Nakano et al. ,2002).
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