地質学雑誌
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本邦新第三紀貝化石(第1報)
金原 均二
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1937 年 44 巻 527 号 p. 781-786

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抄録

地質調査所の所藏する標本の中の數種を選んで記載を試みた。1) Melongena sazanami(新種) 技師佐藤源郎學士は「高梁」圖幅地質調査に際し多くの新第三紀貝化石を採集せられた。蒐むる所悉く植月津山兩統に屬する地層からである。中國地方新第三紀層の一般たる周知の如くVicarya callosa JENKINSを伴へる暖海性動物群を含める事であるが, 茲に記載するメロンゲナも亦その分布は「印度-太平洋區域」に限つて産する暖海屬である。佐藤學士によつて獲られた此新種は特徴ある漣状の縲状彫刻を具へ, ジャワ"の始新統より産する1種に近似する。2) Turritell (Haustator) sakakurai (新種) 眞岡統の長島貝殻層及び布禮頁岩層は北海道の幌内統及び常磐の淺貝砂岩に對比され得る動物群を含むが, 荒貝噴出岩層をへだてて上位にある本斗統の最下部たる八眺嶺硬質頁岩層は一般に化石に乏しい。三菱鑛業の坂倉勝彦學士は南樺太南名好川上流からTurritellaの1種を本硬質頁岩層から採集せられて筆者に贈られた。之を檢するに縲塔極めて秀でた特異な1種である。類似した種若しくは近縁の種は我國からは未だその産出を聞かない。3) Cuspidaria (Cardiomya) makiyamai (新種) 東大地質教室に槇山教授採集によるCuspidariaが保存せられてある。常磐地方によく發達する淺貝砂岩層より産出した化石で, 亞屬Cardiomyaに屬する。Cardiomyaは米國加州の始新統に甚だ多く發見されるのは注意を惹くが, 更に注意すべきはジャマイカ(Jamaica)の漸新統より産するCuspidaria craspedonica DALL に酷似する事である。終りにのぞみ, 發表を許可せられたる山根所長, 種々御教示をいただいた渡邊技師, 槇山教授, 黒田, 大塚, 大炊御門, 池邊, 鈴木諸氏に厚く御禮申し上げる。〓御多忙中にも拘わらず檢閲の勞をとられた渡邊技師, 標本を提供せられた槇山教授, 佐藤技師及坂倉學士に深く感謝の意を表する。

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