日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: S1-O-5
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S1. 球状コンクリーションの科学–理解と応用-
鉄コンクリーションの形成モデル
*城野 信一梶浦 鉄平田村 美紗樹岡村 裕之勝田 長貴吉田 英一
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抄録

アメリカ,ユタ州のエスカランテステアケース国定公園,モンゴルのゴビ砂漠において球殻状に酸化鉄が沈殿したコンクリーション(以下,鉄コンクリーション)が発見されている.火星のメリディア二平原においても同様の球状物体が発見されたため,その起源に注目が集まっている.Yoshida et al. (2018)において,鉄コンクリーションの形成メカニズムが 1:炭酸塩コンクリーションの形成 2:炭酸塩コンクリーションの周囲に水酸化鉄が沈殿 3:残った炭酸塩コンクリーションが溶解,鉄の殻が残る と明らかになった.現在観察されている鉄コンクリーションのサイズ,殻の厚さ,形状などの情報とこれらのプロセスを数値シミュレーションした結果とを比較することで鉄コンクリーション形成当時の環境(鉄イオンの濃度,pH,地下水の流速)などに制約を与えることが可能となる.この発表では,我々のグループがこれまで行ってきた数値シミュレーションを紹介し,その結果から得られた形成当時の環境について議論を行う.以下の2つのシミュレーションを紹介する.

1:炭酸塩コンクリーション表面における水酸化鉄の沈殿

鉄コンクリーションの半径,および鉄の殻の厚みは計測値が存在する.これらの数値を再現するために必要な条件として,鉄イオンの濃度x溶存酸素濃度 の積がある範囲に入っていること および 4.5 < pH < 6 となっている必要があることがわかった

2:ツイン炭酸塩コンクリーションの形成

多くの鉄コンクリーションは単独の球であるが,一部には2つもしくは3つの球が連結しているものが発見される.同一サイズの二つの球からなるコンクリーションを考えると,結合部の半径とコンクリーション本体の半径 と二つの計測値が得られる.計測値を再現するために最も重要なパラメータが.初期に形成される沈殿物の間隔であることがわかった.また,炭酸塩コンクリーションの形成時にはイオンの拡散が重要でないことがわかった.

参考文献:Yoshida et al. (2018) Science Advances, 4, eaau0872

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