日本地質学会学術大会講演要旨
Online ISSN : 2187-6665
Print ISSN : 1348-3935
ISSN-L : 1348-3935
第128学術大会(2021名古屋オンライン)
セッションID: R17-O-4
会議情報

R17(口頭)情報地質とその利活用
地質情報ARアプリ「ジオ・ビュー」の開発
*宮地 良典野々垣 進藤原 治渡辺 真人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

地質情報は人々の生活と深く関係する時空間情報であり,効果的に利用できる環境を整えることにより,より豊かな社会の実現につながると期待できる.産総研地質調査総合センターでは,日本の地質研究の黎明期から140年にわたり多様な地質情報を整備し,5万分の1地質図幅や地質図Navi[URL1]をはじめとして,紙の印刷物やインターネットなどを通して積極的に地質情報を社会へ発信してきた.しかし,そのような地質情報の利用者のほとんどは,減災・防災や資源開発等に携わる研究者や技術者であり,一般の人々による地質情報の利活用,すなわち地質情報の社会実装は十分には進んでいないのが実状である.

 地質学に関する専門的な知識や技術をもたない人でも地質情報を手軽に利用できるようにすることを目的に,ハード・ソフト両面での利用環境を検討した.ここではその一例として試みた,拡張現実(Augmented Reality: AR)技術を利用して,スマートフォンのカメラ越しに見える風景(以下,カメラ風景)に地質情報を付加して表示するアプリの開発について報告する.

本アプリの機能は,大きく次の3つにまとめられる.

1.地質図オーバーレイ機能:カメラ風景に,あらかじめ登録した地質図画像を重ね合わせて表示する機能である.地質図画像の透過度を調節することで,地質と地形・植生などとの関係を一目で理解できるようになっている.

2.鳥瞰機能:あらかじめ登録した地形情報を利用して,アプリの利用位置周辺の鳥瞰図を表示する機能である.地質図画像のオーバーレイもできるため,カメラ風景よりも広域的に地質図を閲覧したいときに有効である.

3.ジオサイト案内機能:カメラ風景や鳥瞰図に,あらかじめ登録したジオサイトをマーカー表示する機能である.ジオサイトのマーカーをタップすることにより,そのサイトの概要を画像付きで閲覧できる.また,スマートフォン搭載GPSから得た位置情報をGoogle Mapsと連携する機能を実装し,現在地からジオサイトまでの経路検索も可能となっている.

 上記の機能は,地質図に馴染みのない人が日常生活の中で,専門家を伴わずに地質情報に触れ合うことを可能とする.また,これにより現在のような集団行動が制限される状況下においては,少人数での地質見学を開催するうえで有用なツールになると期待される.

 本アプリは2020年に基本設計と茨城県南部の筑波山周辺をモデル地域とした地質情報のデータセットの搭載が行われた.2021年2月には,茨城県つくば市の支援事業を通して,一般の方を対象としたユーザビリティに関するモニター調査を行った[URL2].その結果,インターフェイスやユーザーニーズに合わせたコンテンツの搭載などの課題はあるが,地質の理解を深めるうえのツールとして有効であることが分かった.今後改良を加え社会実装につなげたい.

[URL1] 産総研地質調査総合センター,地質図Navi,https://gbank.gsj.jp/geonavi/.

[URL2] つくば市,令和2年度つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業,https://www.city.tsukuba.lg.jp/shisei/torikumi/kagaku/1005023/1012294.html.

著者関連情報
© 2021 日本地質学会
前の記事 次の記事
feedback
Top