日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: G3-O-3
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G3. ジェネラル-サブセッション3 環境地質
自治体観測井による2017年と2020年の関東地下水盆の地下水位
*古野 邦雄香川 淳
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抄録

関東地下水盆の地下水位経年変化:関東地方の各自治体による観測成果はそれぞれの自治体ごとに公表され活用されてきたが,関東地方知事会関東地方公害対策本部地盤沈下部会(1983)が1964年以降の関東地下水盆の地下水位図を発表して以降,同組織が2011年に解散されるまでは同組織により関東地下水盆の地下水位図が適宜公表されてきた.また,同組織が解散した後は筆者らにより随時作成されてきた. それらによれば,1964年の地下水位図では東京の江東地区に-50mTP(TPは標高を意味する)の最も地下水位の低い等値線を中心に盆状の形状となっている.その後,最も低い地下水位等値線は,1971年は,-60mTP,1975年は-40mTP,1980は-30mTP,1984年は-20mTPであり徐々に上昇してきている.その後は大きな変化はなく,渇水時など稀に-30mTPまで低下することもあったが,-20mTPが最も低い等値線であった.地下水位はその後もわずかながら上昇を続け2001年には-10mTPとなった.これ以降は大きな変化はなく,最も低い等値線は-10mTPが続いている.

2017年と2020年の地下水位の比較:最近の地下水位について2017年7月と2020年7月の関東地下水盆の地下水位図を比較して述べる2017年から2020年にかけて地下水位は全体的にはわずかながら上昇している.最も地下水位が低下している地下水盆の中央部は-10mTPの等値線が見えるがその範囲は縮小している.千葉県佐倉市にあった-10mTPの等値線は消滅した.東京都西部にあった地下水位の高まりを囲んで独立して存在していた+10mTPの等値線は消え,+10mTPの等値線はこの高まりを飲み込む形で東に大きく張り出した形となった.千葉県南西部の0mTPの等値線が消滅した.また,横浜市の地下水位測定の再開により,2020年の横浜市付近の地下水位が明らかとなった.両図から地下水盆の縁辺部の地下水位を見ると,地下水盆北部では群馬県で+90m,栃木県で+70mTP,地下水盆北西部では埼玉県北西部に+60mTP, 地下水盆西部では東京都北西部に+80mTP,地下水盆南東部では千葉県中央部で+50mの等値線が見える. 南関東地方では1970年代に地下水位が上昇しているが,北関東地方では地下水位が低下している観測井もある.

まとめ 地下水位が最も低下した時期は1971年で-60mTP,その後は南関東地方では上昇を続け,現在は-10mTPに回復している.北関東地域では現在も地下水位が下がったままの地域もあるが全体としては上昇傾向が続いておりその傾向は2020年においても変わらない.関東地方の自治体がそれぞれの自主性を尊重しながら,お互いの情報を交換し合い,共同して調査・研究を進めてきた関東地方知事会環境対策推進本部地盤沈下部会は2011年に解散したままだが,一刻も早い同様組織の再開と関東地下水盆の地下流体資源の持続的な有効活用の検討が望まれる.

謝辞: 関東地方における地盤沈下観測井・地下水位観測井などのモニタリングの維持管理および観測記録の取りまとめは.各自治体の担当職員,現場において品質の良い現場データ維持管理および計測を担当されている多くの観測員の努力によりなされている.これらの方々に感謝いたします.

引用文献(参考文献): Nirei. H., and Kunio F., 1986, Development of Quaternary Resources and Environmental Protection, -Status of Underground fluid resources use in the Kanto groundwater basin-, Recent Progress of Quaternary Research in Japan, National Committee for Quaternary Research in Japan, vol.11, Quaternary Research, 71-80.

楡井久・古野邦雄, 1998, 地下水盆のモニタリング, アーバンクボタ No.27, pp20-26

関東地方知事会 関東地方公害対策推進本部地盤沈下部会,1983,関東地方広域地下水位等調査報告書 p228

関東地方知事会 関東地方環境対策推進本部地盤沈下部会,2005,

関東地方広域地下水位等調査報告書 p124 関東各都県 地盤沈下調査結果報告書, 各年, 関東各都県.

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