日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: G7-O-5
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G7(口頭). ジェネラル-サブセッション7 海洋地質
窒素ガス吸着法を用いた沈み込み帯断層の微小間隙構造分析
*中元 啓輔亀田 純濱田 洋平増本 広和
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抄録

沈み込み帯における断層運動は津波を伴う地震を発生させる可能性があり,地震性すべりのメカニズム解明はきわめて重要である.地震性すべりを引き起こす断層運動は間隙水圧の上昇などの流体による影響が考えられる (Sibson, 1973).流体の挙動は透水性によって支配されており,透水性は間隙率との相関性がみられる.しかし,透水性は間隙率だけではなく,間隙構造の違いによっても変化すると考えられる.断層岩の間隙率推定は水銀圧入法や海洋掘削においてはMAD法などによって行われているが,本研究では間隙構造推定に窒素ガス吸着法を用いる.窒素ガス吸着法の岩石への適用はシェールガスなどの資源探査分野で行われており,頁岩のガス貯蔵量推定に用いられている.この手法は水銀圧入法よりも小さい細孔の分析に適しており,細孔容積,BET比表面積といったナノスケールでの岩石の構造を表すパラメータの解析が可能となる.本発表では断層岩の微小構造分析における窒素ガス吸着法の有用性について検討する.

今回用いた断層岩試料はIODP Exp. 316 (NanTroSEIZE),IODP Exp. 343(JFAST),延岡衝上断層掘削プロジェクト(NOBELL)で採取されたボーリングコア試料と房総半島の白子断層である.試料は実験前に425μm以下に粉砕し,200℃で12時間真空脱気し試料表面の吸着分子を取り除いた.前処理した試料を窒素ガス吸着法で測定し吸脱着等温線 (isotherm)を得た.得られた吸脱着等温線からBET法によりBET比表面積,BJH法により細孔径分布を求めた.

測定した吸脱着等温線はすべての試料でヒステリシスがみられた.ヒステリシスの形状は細孔の形状を反映すると考えられており(Sing, 1985),測定した試料内で産地・鉱物組成ごとの差だけではなく,断層と原岩の間にもその形状の違いがみられ,断層運動による細孔構造の変化が示唆された.

BET比表面積を比較すると,間隙率の高い浅部の断層では比較的高い値を示しているが,深部の断層では明確に低下している.また,白子断層のBET比表面積は断層において急激に増加している傾向がみられ,表面構造の変化においても断層運動の影響が示唆された.

引用文献

Sibson, R. H. (1973). Interactions between temperature and pore-fluid pressure during earthquake faulting and a mechanism for partial or total stress relief. Nature Physical Science, 243(126), 66-68.

Sing, K. S. (1985). Reporting physisorption data for gas/solid systems with special reference to the determination of surface area and porosity (Recommendations 1984). Pure and applied chemistry, 57(4), 603-619.

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