日本地質学会学術大会講演要旨
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第129年学術大会(2022東京・早稲田)
セッションID: G1-P-9
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G1(ポスター). ジェネラル-サブセッション1 構造地質
過去の地震断層におけるひずみ解析:白亜系四万十帯・横浪メランジ
*三谷 陣平橋本 善孝
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抄録

帯磁率異方性(Anisotropy of Magnetic Susceptibility, AMS)によるひずみ解析は、延性ひずみに敏感である特性を用いて、過去の応力と変形機構との関係を理解する上で有用である。過去に沖縄本島の四万十帯付加体では広域AMSで沈み込み帯でのひずみの発展を明らかにした(Ujiie et al., 2000)。また、IODPコアの高密度なAMS解析では断層でひずみが変化することが示された(Annika et al., 2020)。しかし、陸上付加体で断層を挟んだ高密度なひずみ解析を行った例はない。よって高密度サンプリングによるAMS解析で断層に応じたひずみの空間分布から局所的かつ脆性的な地震断層の影響ではない延性ひずみの厚さを明らかにすることを目的とする。   白亜系四万十帯に属する横波メランジュの北縁にある五色ノ浜断層を対象に行う。最終活動年代は52.4Maで、幅2~3mの断層帯で20センチほどの脆性破砕帯を伴う。その脆性破砕帯の中では厚さ数百ミクロンの局所化した断層があり、流動組織、溶解組織、注入脈、発泡組織などのほかシュードタキライトも発見されている(Hashimoto et al., 2012)。  五色の浜断層を中心に南北40mの範囲でサンプリングを行い、計100個のデータを獲得した。露頭から採取する時に、試料に走向と傾斜の線を引く、その走向の線をめがけて、コアドリルを用いて円柱状にくり抜き、軸方向が2㎝になるように切断し、走向の一方向を下向きにセットし解析を実行する。 帯磁率は、ある一定の外部磁場を与えたときに獲得する磁化強度の比であり、異方性は、磁化許容量である帯磁率の偏りである。この三次元的な帯磁率強度分布を長軸(Kmax)・中軸(Kint)・短軸(Kmin)の3成分を持つ異方性楕円体として表すことができる。この3成分から形状パラメータTと異方性強度パラメータP‘を求め、3成分の方位と共にひずみを評価する。Tは-1から+1の範囲で葉巻型(prolate)から扁平(oblate)とひずみの形状を示す。Pは帯磁率楕円体が球形であったとする初期状態からの変化量を示す。  Kminは低角でNE-SW方向やや集中し、KmaxとKintはNW-SE方向にガードル状に分布した。さらにT-P‘ダイアグラムで全体的に扁平(oblate)を示したことから、大局的に見た場合、堆積時の層に垂直な荷重による圧密の記録が残されていることを示唆している。また、断層に近づくに従ってT、P’値ともに小さくなる傾向が見られた。このことから破砕帯内では圧密による扁平なひずみに剪断変形による葉巻型のひずみが上書きされたことを示唆している。これは他の断層帯でも、ひずみが扁平(oblate)から中性的な平面ひずみ、葉巻型(prolate)へと上書きさることは示されている(Shihu et al., 2020)。破砕帯内には破砕粒子の周辺に泥質な基質が流動的に剪断変形しており、葉巻型のひずみの上書きに寄与していると考えられる。その破砕帯内のT値を3つに分類し、方位の比較を行った。0.4∼0.7は葉巻型のひずみに近づいているといえるが、3成分の軸が揃っていることから延性ひずみが保持されていると考えられる。一方、0.4以下になると方位がばらつく。これは葉巻型のひずみが更に上書きされると脆性破壊が起こり、粒子がランダムに回転するためばらついていると示唆される。今後の課題は、ひずみパラメータと変形組織を対比し、解釈を裏付ける組織が見られるかを検討することである。 Ujiie et al., 2000, JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH Annika et al., 2020, Earth and Planetary Science Letters Hashimoto et al., 2012, Island Arc Shihu et al., 2020, Geophysical Research Letters

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© 2022 日本地質学会
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