日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T12-P-3
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T12.地球史
(エントリー)ペルム紀-三畳紀における地球外³He流入量の復元
*瀨戸山 功平高畑 直人尾上 哲治塩原 拓真佐野 有司磯崎 行雄
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抄録

地球表層に降下する宇宙塵の総量は, 年間2700±1400トンから16000±9100トンと見積もられており,地表 1 m2あたりにもたらされる宇宙塵は年平均 0.05 mg 以下とごく少量である.しかし,大洋域の深海底で堆積した遠洋性堆積物は,大陸起源の粗粒砕屑物の流入がほとんどなく,堆積速度が非常に遅いため,他の堆積物に比べ地球外物質が濃集しやすい.そのため,遠洋性堆積物から地球外物質流入量の変動を調べることによって,小惑星帯での衝突イベントや惑星間空間に分布する塵の増減を復元できると考えられている.また,地球外物質は地球物質に比べ高いHe同位体比(3He/4He比)を持つことが知られており,深海堆積物中の³He濃度は白亜紀以降の地球への地球外物質の流入量を復元することに利用されている.しかし,ジュラ紀以前の深海底堆積物は,現在の深海底にほとんど存在しないことから,ヘリウム同位体(3He, 4He)を用いたジュラ紀以前の地球外物質流入量の記録は復元されていない.  そこで本研究では,後期ペルム紀から三畳紀を対象に,ヘリウム同位体を用いて,地球外物質流入量の変動記録解読を試みた.研究対象は,美濃帯(岐阜県舟伏山地域,犬山地域)および秩父帯(大分県津久見地域)の上部ペルム系〜上部三畳系遠洋性堆積岩である層状チャートである.ヘリウム同位体分析は,東京大学大気海洋研究所の希ガス用質量分析計を用いて行った.  測定の結果,バルク分析で得られた3He濃度は,ペルム紀キャピタニアンからチャンシンジアンにかけて増加する傾向がみられた.また,ウーチャーピンジアンの最前期とチャンシンジアン最後期において,3He濃度の短期間の上昇がみられた.ペルム紀/三畳紀境界より上位層では,3He濃度は急激に低下した. 3He/4He比は,0.3〜0.8 Raの値をとり,全体としては検討セクションの下部から上部に向かって緩やかに低下する傾向がみられた.また本研究では,中期三畳紀のアニシアン後期とラディニアン後期において,地球外³Heの流入量が増加したことが明らかになった.  検討したセクションの堆積速度に基づいて地球外3Heフラックスを計算すると,ペルム紀ウーチャーピンジアン最前期,チャンシンジアン最後期,中期三畳紀アニシアン後期,ラディニアン後期において,3Heフラックスが約4〜7倍増加したことが明らかになった.この結果は,小惑星帯における大規模な衝突や長周期彗星の増加などによって,これらの時期に惑星間空間に分布する塵が増加した可能性を示唆している.またこれら4度の地球外3Heフラックス増加は,主要な海退が起こった時期と一致する.そのため,オルドビス紀のL-コンドライト母天体崩壊イベント(約466Ma; Schmitz et al., 2019)で報告されているように,宇宙塵フラックス増加が,地球規模の寒冷化と大規模な海退を引き起こした可能性がある.引用文献:Schmitz, B. et al., 2019. An extraterrestrial trigger for the mid-Ordovician ice age: Dust from the breakup of the L-chondrite parent body. Sci Adv 5, eaax4184.

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