日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: OR-P-1
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OR.アウトリーチセッション
ヒマラヤ地学ツアーへのご招待
*吉田 勝学生のヒマラヤ野外実習 プロジェクト
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抄録

ヒマラヤ地学ツアーへのご招待 吉田勝1・学生のヒマラヤ野外実習プロジェクト2 今から約1億年前に巨大大陸ゴンドワナから分かれたインド亜大陸は,5500万年前に古アジア大陸南縁に衝突した.そして5500万年前から現在にかけて両大陸の衝突地帯ではドラマティックな地球規模地学事件が展開され,ヒマラヤ山脈が生まれたのである. ヒマラヤは現在も上昇しつつあり,さらに将来長きにわたって同じ動きを続けるであろう.この地球上で尤も新しくかつ活動的な山脈では,極端に鋭い地形,現在も続く急斜面の形成と絶え間ない水平方向の移動と垂直上昇の結果として,地震,地すべり,雪崩,土石流,河川洪水などの自然災害が頻繁に発生している.山脈に並行して明瞭な帯状分布を示す地形・地質と気候特徴は,各帯における自然災害の特徴・種類や大きさを支配している.ヒマラヤは山脈形成の地質過程や自然災害を学ぶ最高の自然博物館である.ヒマラヤの地学ツアーを経験した人は様々な地質過程や自然災害を目の当たりにし,地球自然への理解,さらには自身の居住地の自然への興味と理解を深めることになるであろう. 東西に連なる標高8000mのヒマラヤの主脈を切って南北に流れるカリガンダキ河は,ヒマラヤ山脈が上昇を始める前から存在していた先行河川である.谷の両側には8000m峰,ダウラギリとアンナプルナがあり,谷の両側は急傾斜で,稜線との比高差は6000mに及ぶ世界最深の谷である.南から北に谷を登って行くと,地質・標高と地形・気候・植生がドラスティックに変化し,それに加えて村落の形態や文化に明瞭な変化を見ることができる.このため,カリガンダキ河はヒマラヤトレッキングコースの中でも大きな魅力があり,多くのトレッカーが訪れるのである.河に沿って歩いて行くと,独特の地形と美しいヒマラヤの山と谷だけでなく,劇的に変化する気候,植生や人々の文化に目を見張るであろう.カリガンダキ河のトレッキングでは,自然の美しさのエッセンスを見ることができるが,それに加えて多彩なヒマラヤ民族の生活文化の違いも明らかなのである. 来年3月に第12回目を迎える学生のヒマラヤ野外実習ツアーは,トランスヒマラヤの標高3800mにあるヒンドウ教の聖地ムクチナートを出発点とし,カリガンダキ河に沿って歩き,さらに車で南下して標高150m,ガンジス平原にある仏教の聖地ルンビニまで,ヒマラヤ造山帯の完全横断を行なう.参加者は主に学生だが,一般市民も歓迎される.全行程に車が同行するので足の弱い人も参加でき,過去には全く歩けない人が参加して楽しんだ.日本発着17日間ほどで参加費は学生20万円,一般25万円以内を目標とし,過去11回の平均参加費は学生165,000円,一般215,000円であった. 発表では過去11回の実習ツアーのハイライトとまとめを展示し,来年3月の第12回実習ツアーの内容を説明する. 1 ゴンドワナ地質環境研究所及びトリブバン大学トリチャンドラキャンパス地質学教室 2 世話人会:酒井哲弥(島根大,代表),吉田勝(共同代表),在田一則(北大),B.N.ウプレティ(ネパール科学技術アカデミー)

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