日本地質学会学術大会講演要旨
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第130年学術大会(2023京都)
セッションID: T5-O-14
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T5.テクトニクス
西南日本の地震活動の地震帯区分と南海Trough巨大地震
*新妻 信明
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抄録

西南日本で繰返される海溝型巨大地震は,世界で最も詳細に記録されている.この地震記録に基づけば,将来,海溝型巨大地震が起こることは確実で,「南海Trough巨大地震」と呼ばれ,対策が検討されている.問題は,この巨大地震が何時到来するかである.地震記録は,地震被害による城修復についての厳しい江戸幕府の監視が日本列島全域へ拡充させ,1922年からの地震計網による震源決定,1994年からCMT解公開,1997年からの一元化初動発震機構解解公開を経て飛躍的に向上してきた.これら日本列島全域の27353個の地震記録を38震源帯と202震源区への区分に従い(新妻,2023),西南日本の8震源帯・39震源区を検討した.海溝型巨大地震は西南日本沈込震源帯TrPhに属する.繰返は,「年号」を付して区別する. 海溝型巨大地震は単発でなく連発することが知られている.石橋(1976)は,海溝型巨大地震「昭和」では,「安政」で連発した東海地震が起こっていないと注意を喚起した.しかし,未だ起こっていないのは,1944年「昭和」の前の,1923年大正関東地震が東海地震域の歪を解放していたからと考えられる. 地震規模に基づいて算出される地震断層面積の累積を図示するBenioff曲線は(新妻,2015),海溝型巨大地震「慶長」・「宝永」とその後の静穏化によって階段状になっている.しかし,「安政」から「昭和」までの期間は,静穏化せず日数の経過とともに増大する異常が認められる(付図参照). 「安政」-「昭和」の期間には,「銭洲」・「伊勢湾」-「若狭湾」と九州におけるM7.5以上の西南日本沈込震源帯TrPh海溝型以外の西南日本脊梁震源帯BkbPh・西南日本裂開震源帯RifPh・西南日本海岸震源帯JscPhの地震によって,静穏化していない. 駿河Trough軸と南海Trough軸は「逆く」の字型に接続しており,沈込むSlabが不足して裂開しなければ沈込めない.「伊勢湾」‐「若狭湾」はこのSlab裂開域に当たる.裂開が不完全な場合には「銭洲」に背面破断が発生する(新妻,2007). 南海Trough軸と琉球海溝軸は「く」の字型に接続しており,沈込むSlabが過剰になり,余剰Slabが襞とならなければならない. 西南日本沈込震源帯TrPhと他の震源帯BkbPh・RifPh・JscPhの地震断層面積移動平均規模曲線を比較すると,「安政」から「昭和」で逆相になっており,Slab沈込とSlab過不足調整には時間差があり,交互に進行することが示唆される. 琉球海溝全域のCMT解のBenioff曲線は,日数の経過とともにほぼ直線的に増大している.しかし,区分された各震源帯毎のBenioff曲線は,階段状で,段差の生じる時期が海溝から離れる従い,沈込震源帯TrPh・平面化震源帯uBdPh・裂開震源帯RifPhの順にずれ.最後まで行くと最初に戻り一周することが明らかになった.この周期に「‐3」から「+3」の歪解放周期番号を付した. 琉球海溝域の歪解放周期開始の海溝震源帯地震と西南日本の海溝型巨大地震を比較すると,「平成」は「1」の後になって琉球海溝域の影響を受けているが,「昭和」は「-2」の直前で琉球海溝域に影響を与えており,相互作用を認めることができる.   付図説明.江戸時代以降の西南日本地震活動. 左図:震央地図,右縁の数値はAmur Plateに対するPhilippine海Plateの相対運動Euler緯度,括弧内数値は年間相対運動距離(cm). 中図:海溝距離断面図. 右図:Euler緯度断面図.areaMは,設定期間の250分の1の618.5日毎に集計した地震断層面積規模.Benioffは,累積地震面積曲線.右下図は,南海Trough軸傾斜方位を中心線(TrDip)とした発震機構解の主歪軸傾斜方位でPlate運動方位は紫色線(Sub).   引用文献 石橋克彦(1976)地震学会予稿集I,30. 新妻信明 (2007), プレートテクトニクス−その新展開と日本列島−. 共立出版,東京, 292p. 新妻信明 (2015)総地震断層面積のベニオフ図.新妻地質研究所特報5,https://www.niitsuma-geolab.net/article07/article05. 新妻信明 (2023) 「和達深発日本面震源帯」の「大和堆無震領域」と2011年3月11日M9.0.地球惑星合同大会,SSS11-P01.

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© 2023 日本地質学会
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