日本地質学会学術大会講演要旨
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第131年学術大会(2024山形)
セッションID: T11-P-1
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T11.鉱物資源研究の最前線
南大西洋レアアース泥の地球化学的特徴とその起源
*安川 和孝児玉 祐真森 駿介桑原 佑典大田 隼一郎小笠原 光基吉田 頌Tampah Marshel矢野 萌生町田 嗣樹芦田 果奈藤永 公一郎中村 謙太郎加藤 泰浩
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抄録

新規レアアース資源として有望視されている「レアアース泥」の空間分布・品位・起源については,これまでに太平洋 [1–5] やインド洋 [6,7] を対象として詳細な研究が進められてきた.本発表では,レアアース泥の存在について未だ系統的な検討がなされていない南大西洋を対象として,過去の海洋科学掘削により採取された深海堆積物レガシーコア試料の新規分析結果を報告する.

本研究では,レアアース泥に典型的な岩相である遠洋性粘土がコア記載に含まれる8サイトの深海堆積物試料について,主成分および微量元素分析を行った.その結果,南大西洋にもレアアース泥 (総レアアース濃度400 ppm以上) の存在が確認された.例えば,中央南大西洋のDeep Sea Drilling Project Site 19では,海底下 4 m付近にレアアース泥が認められた.化学組成の特徴から,南大西洋のレアアース泥には海水起源成分の影響が相対的に強く見られることが分かった.

また,本研究で確認された南大西洋レアアース泥の一部は,中新世に堆積したことが微化石層序から示唆される.中新世において南大西洋では,炭酸塩補償深度 (CCD) が約600 m上昇したことが報告されている [8].このことから,中新世の南大西洋レアアース泥は,CCDより深い堆積環境が数百万年間にわたり続いたことで炭酸カルシウムが溶解し,堆積速度が著しく低下してレアアースが相対的に濃集したために生成した可能性がある.

[1] Kato et al. (2011) Nat. Geosci. 4, 535-539. [2] Iijima et al. (2016) Geochem. J. 50, 557-573. [3] Mimura et al. (2019) J. Asian Earth Sci. 186, 104059. [4] Ohta et al. (2021) Ore Geol. Rev. 139, 104440. [5] Tanaka et al. (2023) Geochem. Geophys. Geosyst.24, e2022GC010681. [6] Yasukawa et al. (2014) J. Asian Earth Sci. 93, 25-36. [7] Yasukawa et al. (2015) Geochem. J. 49, 621-635. [8] Dutkiewicz and Müller (2022) Geochem. Geophys. Geosyst. 23, e2022GC010667.

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