日本地質学会学術大会講演要旨
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第131年学術大会(2024山形)
セッションID: T16-O-10
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T16.地球史
新潟県佐渡島中新統中山層から復元されたorbitalスケールケイ素循環変動
*吉岡 純平黒田 潤一郎板井 啓明
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抄録

地球表層のケイ素循環は,ケイ酸塩鉱物の化学風化や海洋での生物ポンプなどを通じて炭素循環と密接に関連しており,地質学的タイムスケールでの気候システムを理解するために重要な要素の1つである.過去のケイ素循環は,堆積物中に保存された生物源シリカ(bSi)のゲルマニウム/ケイ素(Ge/Si)比やケイ素安定同位体比(δ30Si)を分析することで復元される.特に第四紀を中心にGe/Si比やδ30Siの復元が行われ,氷期-間氷期スケールで変動していることが確認されている(e.g., Mortlock et al., 1991; Sutton et al., 2018).一方で,中新世などのより古い時代については,時間解像度の問題により,当時のケイ素循環にorbitalスケールでの変動が存在するかは分かっていない.このことは,長期的なケイ素循環の変化を明らかにする上での障壁となっている.

本研究では,新潟県佐渡島に分布する中新統中山層の珪藻質泥岩に対して,bSiと砕屑物の量比変動に基づいたサイクル層序対比を行い,高解像度年代モデルを構築した.また,約15 kyr間隔で採取した堆積物試料から珪藻殻を分離し,そのGe/Si比とδ30Siを分析した.Ge濃度,Si濃度,δ30Siはそれぞれ同位体希釈水素化物発生誘導結合プラズマ質量分析法(ID-HG-ICP-MS),ICP発光分光分析法(ICP-AES),マルチコレクターICP-MS(MC-ICP-MS)によって測定した.その結果,Ge/Si比とδ30Siの双方でorbitalスケールでの変動が確認され,寒冷期にGe/Si比とδ30Siは低くなる傾向があることが分かった.これは第四紀に見られる変動パターンと類似していることから,中新世においてもケイ素循環には第四紀と同じような変動メカニズムが存在していたことが推察される.

さらに,本研究ではケイ素循環の変動要因をボックスモデルを用いて評価した.ボックスモデルでは,表層での溶存シリカ(dSi)利用度,bSiの堆積物への保存効率,河川流入量,熱水流入量,日本海の海閾深度の5つをそれぞれ変化させた場合にbSiのGe/Si比とδ30Siがどのように変化するかを調べた.その結果,寒冷期の低いGe/Si比と低いδ30Siは,表層でのdSi利用度の低下,河川性Si流入量の低下,bSiの堆積物への保存効率の低下という3つの要素の組み合わせによって説明可能であることが示された.

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