日本地質学会学術大会講演要旨
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第131年学術大会(2024山形)
セッションID: T17-O-1
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T17.沈み込み帯・陸上付加体
日本海溝における上部プリズムの物理的・構造的特徴と形成過程
*神谷 奈々濱田 洋平奥田 花也中元 啓輔内田 泰蔵細野 日向子橋本 善孝久保 雄介
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抄録

2011年の東北地方太平洋沖地震では、従来ひずみの蓄積やすべり伝播が生じないと考えられていたプレート境界浅部において大規模な断層すべりが生じ、巨大津波を発生させた。また日本海溝のプレート境界浅部で掘削を行ったIODP Exp.343(JFAST)からは、プレート境界断層が低摩擦の遠洋粘土岩で発達していたことと同時に、断層の上盤にあたる上部プリズムにひずみが蓄積し、地震時に解放されたことが明らかとなった(Lin et al., 2013)。一方で、JFASTでは上部プリズムからのサンプル回収が限定的であったため、その重要性にも関わらず、上部プリズムの構造発達過程や物理特性は十分に明らかになっていない。本研究の目的は、巨大地震のひずみ蓄積の場である日本海溝プレート沈み込み帯の上部プリズムの形成過程を解明し、上部プリズムの物理的・構造的特徴の時空間分布を明らかにすることである。そのために、ReCoRD(リポジトリコア再解析プログラム)により、過去に掘削されたコアを用いて日本海溝の沈み込み前後の堆積物の物質特性と地質構造を調べた。対象とする掘削孔は、1つのインプットサイト(Site 436)と4つの海溝軸陸側サイト(Site 434、439、440、C0019)である(Shipboard scientific party, 1980; Expedition 343/343T Scientists, 2013)。インプットサイトでは、完新世から始新世にかけての年代的に連続した珪質堆積物と白亜紀のチャートが回収されており、沈み込む堆積物のリファレンスとなる。上部プリズムの前縁側に位置するSite 434 とSite 440 では、上部中新世までの珪質泥岩が採取され、沈み込む前の堆積物と年代との対応がみられた。これらのコア試料からは多くの褶曲や逆断層が確認され、プレート沈み込みに伴う変形を受けたことが示唆された。一方、C0019地点のコア試料回収はプレート境界断層付近(648.0 - 821.5 mbsf)に集中しており、浅部上部プリズムからのコア試料は176.5 -186.0 mbsfに限られている。このサイトでは掘削同時検層によって自然ガンマ線、電気比抵抗が取得されている。このため、DSDP コア試料の 物性測定により、 C0019 の未回収深度の岩相と構造の推定をおこなった。Site 439は音響基盤と上載堆積物の不整合を貫いた唯一のサイトであり、掘削孔の最下部からは白亜紀の堆積物が回収されている。不整合面下には明瞭な反射面が観察されないことから、これらの古い付加堆積物が主として上部プリズムを構成し、その物理的性質がプレート境界断層の上盤内のひずみ分布を制御している可能性がある。本発表では、主にDSDPで取得されたコアを用いた新しい連続コア解析の結果を紹介する。

引用文献

Lin et al., 2013, Science, 339, 6120, 687-690

Site 434, the Lower Trench Slope, Leg 56, Shipboard Scientific Party, 1980

Site 436, Japan Trench Outer Rise, Leg 56, Shipboard Scientific Party, 1980

Site 438 and 439, Japan Deep Sea Terrace, Leg 57, Shipboard Scientific Party, 1980

Site 440, Japan Trench Midslope Terrace, Leg 57, Shipboard Scientific Party, 1980

Site C0019, Expedition 343/343T Scientists, 2013

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