日本地質学会学術大会講演要旨
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第131年学術大会(2024山形)
セッションID: T18-O-2
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T18. 令和6年能登半島地震 (M7.6)
令和6年能登半島地震により形成された海底地震断層露頭
*山口 飛鳥福地 里菜小野 誠太郎大塚 宏徳吉岡 純平田村 千織亀尾 桂沖野 郷子朴 進午
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抄録

海域活断層における地震時の断層運動は、海岸の隆起・沈降や津波の発生をもたらす。令和6年能登半島地震では、能登半島北部で最大4mに及ぶ海岸の隆起が生じた。海上保安庁による測深データからは海域活断層に沿った地形変動が示唆され、著者らは、2024年3月4日-16日に学術研究船「白鳳丸」により行われたKH-24-E1緊急航海において、水中ドローン(小型ROV)による断層調査を行った。その結果、能登半島北部沿岸の2か所(珠洲岬北西沖、輪島北西沖)において、令和6年能登半島地震に伴って形成された地震断層と考えられる海底の段差を2024年3月11日に確認した。

珠洲岬北西沖で見つかった断層露頭は、海底に露出する岩盤(砂泥質の堆積岩)中に発見された。産業技術総合研究所による反射法探査(井上・岡村, 2010)から推定された海底活断層(珠洲沖セグメント)よりも南東側に位置し、北東-南西走向に40 m以上連続する。比高は約50cm程度とみられ、北西側が高く、上部が下部よりも張り出した逆断層センスのずれを示しており、張り出した上盤からの崩落物も認められる。断層面には鏡肌および縦ずれ成分の卓越する条線が認められる。断層面および崩落物の破断面は風化を受けておらず、藻や底生生物が付着していないことから、この断層は観察の数か月以内に形成されたものであり、令和6年能登半島地震に関連する逆断層すべりによって形成された海底地震断層(主断層に対する副次的なバックスラスト)であると考えられる。

輪島北西沖では、海底活断層(猿山沖セグメント, 井上・岡村, 2010)のトレース上に東北東-西南西走向の段差が確認された。段差の比高は1 m未満で、北側が深く南側が浅い。段差の表面には礫や貝殻片などが露出しており、周囲の海底の表面に広く見られる褐色の被膜が乱されていることから、ごく最近に擾乱を受けたと推定される。これらの産状と段差の位置とを考慮すると、この段差は断層変位に伴う撓曲崖であり、令和6年能登半島地震に関連する断層の変位で表面が崩壊したものと考えられる。

今回水中ドローンによる調査を行った3か所のうち2か所で、令和6年能登半島地震によるものである可能性のある海底面の段差が見つかった。このことは、能登半島北部沿岸の広い範囲において、地震時の断層すべりが海底面に達したことを示唆する。また、地震発生から2か月という短期間で海底地震断層を観察した例は珍しく、今後同じ地点を繰り返し観察することにより、海底に露出した断層の風化過程も明らかにできると期待される。

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