抄録
培養血管細胞の寿命は有限であり,一定期間の分裂増殖後,細胞老化と呼ばれる分裂停止状態となる.細胞老化に伴う形質の変化は,老化した血管においてみられる機能不全とよく似ている.老化した血管細胞は実際動脈硬化巣に特異的に認められ,内皮機能障害などの形質を示すことから,生体内における細胞レベルの老化が動脈硬化形成に関与していると考えられる.血管細胞の老化のメカニズムとしては,テロメアの短縮によるもの,あるいはテロメア非依存性のものがある.特に過剰な増殖刺激シグナルに重要であると思われるRasは,血管細胞を老化させ血管炎症性を亢進させる.インスリンの下流シグナルとして重要なAktも過剰に活性化されると,細胞老化促進に働く.これらの老化シグナルは,動脈硬化や糖尿病性血管障害など老化に伴う血管病に関与していることが予想され,老化シグナル制御による新たな血管治療の開発が期待される.