抄録
慢性疼痛に対する三環系抗うつ薬の有効性が示唆された高齢者骨粗鬆症の一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は81歳女性.高血圧,骨粗鬆症のため,当科外来通院中であった.2004年12月中旬に転倒し臀部を強打.腰背部痛が認められたが,1カ月の安静にて腰痛は軽快した.2005年3月中旬,感冒による頻回の咳を契機に,再び腰痛の増悪が認められた.胸腰椎,股関節などのレントゲン撮影を行うも,新たな骨折病変など認められず,経過を観察した.2005年4月上旬,1カ月経過しても腰背痛が改善せず,痛みのために歩行障害を認めるようになったため,精査加療目的で4月19日当院当科入院となった.腰部MRIでは,Th12, L1に圧迫骨折が認められ,急性腰痛の原因としては,胸腰椎圧迫骨折と背筋の過伸展に伴う疼痛などが考えられた.疼痛に対しては,ロキソプロフェン,カルシトニン,ブプレノルフィン,塩酸モルヒネ水など投与したが,十分には奏効せず自力歩行は困難であった.GDSで評価したうつスコアが比較的高かったため慢性疼痛に抑うつ状態が関与している可能性を考慮し,三環系抗うつ薬アミトリプチリンを開始した.疼痛は改善認め歩行可能となったが,口渇,排尿困難感も認められた.副作用を考慮して,アミトリプチリンからセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)抗うつ薬ミルナシプランに変更したが,疼痛は悪化し,体動制限が生じた.再びアミトリプチリンに投与変更すると疼痛軽減し,歩行可能となり,副作用も自制内であったため,投与継続し退院となった.高齢者の慢性疼痛管理は,痛みの要因も多様であり難渋する場合も少なくないが,三環系抗うつ薬が鎮痛補助として奏効する場合があり,副作用に配慮しつつ,治療に応用する価値があると考えられた.