日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
糖尿病の治療経過中に舞踏病様不随意運動を呈した1例
小川 克彦鈴木 裕亀井 聡水谷 智彦
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キーワード: 糖尿病性コレア, 頭部MRI
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2008 年 45 巻 2 号 p. 225-230

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抄録
症例は,糖尿病の既往を有する73歳,女性.口渇·多飲·多尿のため当院内科を受診し,血糖が611 mg/dlであったため入院しインスリン加療を受け退院した.退院した翌日に右上下肢の不随意運動が出現したため当院神経内科に入院した.舞踏病様不随意運動を右上下肢で高度,左上下肢でごくわずかに認めた.尿一般は正常で,尿中ケトン体は陰性であった.血糖(食後約3時間)は136 mg/dlであったが,HbA1cが11.7%と上昇していた.片側性のコレアやバリズムは対側の基底核や頭頂葉,同側の視床下核の梗塞によって急性発症することがある.本症例では入院時,頭部CTで異常所見は明らかではなかったが,舞踏病様不随意運動が急性に発症し,右側にかなり目立っていたことから左側の基底核や頭頂葉,右側の視床下核の梗塞を疑い抗血栓療法を施行した.しかし,不随意運動の改善はみられず,入院4日目に施行した頭部MRI T1強調画像では,被殻から淡蒼球に及ぶ異常な高信号域を左で高度,右でもわずかに認め,T2強調画像では両側被殻に軽度の高信号域がみられた.MRIでは脳梗塞急性期に合致する所見はみられず,T1強調画像の所見が糖尿病性コレア·バリズムの特徴的MRI所見に合致していたことから本症例を糖尿病性コレアと診断した.抗血栓療法を中止し,ハロペリドールの投与を開始したところ,不随意運動は徐々に軽快した.糖尿病患者が片側に目立つバリズムやコレアを急性に発症した場合には,脳梗塞と糖尿病性コレア·バリズムとの鑑別のために,早期にMRI検査を施行する必要がある.
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© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
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