抄録
症例は77歳女性(右利き).急性発症の物忘れを主訴に来院.神経学的には麻痺,感覚障害,構音障害などは認めなかった.Mini-mental state examination,レーヴン色彩マトリックスの高次機能検査の成績はいずれも低下していたが,記憶項目での減点が主で,教育歴が低いことを考慮すると,知能は保たれていると考えた.これに対し,Wechsler Memory Scale-Rでは言語性,視覚性記憶ともに著明に低下しており健忘を呈していた.脳MRI拡散強調画像で右内包膝部に高信号領域を認めたため,脳梗塞と診断し加療した.脳血流SPECTで右視床,右基底核,右前頭葉に血流減少がみられ,視床―皮質間の投射路の障害が本例の健忘に関与していると思われた.右内包膝部梗塞による健忘はまれではあるが,本例の如く,梗塞巣が膝部下方に及ぶ場合には高度の健忘を来たしうるので留意する必要がある.