日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
意識消失で発症し,細菌性髄膜炎に続発性血管炎を合併した高齢者の1例
亀野 まみ高田 俊宏安田 尚史原 賢太岡野 裕行櫻井 孝永田 正男横野 浩一
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2008 年 45 巻 4 号 p. 434-438

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抄録

今回我々は,意識消失にて発症し,細菌性髄膜炎に続発性血管炎を合併した高齢者の一例を経験したので,考察を加えて報告する.症例は83歳の女性.2006年7月末より意識消失発作による転倒を繰り返した.8月初旬より発熱認め,他院入院.頭部MRI,頸部血管超音波検査,脳波,ホルター心電図にて異常なく,腰椎圧迫骨折,尿路感染に対する抗生剤治療後,心因反応も疑われ前医転院した.転院後,再び発熱したため,髄液検査が行われ,好中球優位の細胞数増加,糖低下認め,細菌性髄膜炎として加療開始された.細胞数の低下を認めるも意識障害が遷延し,巣症状も出現したため,細菌性髄膜炎に続発性血管炎の合併を疑い,当院転院となった.髄液の細菌,真菌培養,各種ウイルス抗体は陰性であった.本症例は,細菌性髄膜炎の典型的症状に乏しく,発熱にて入院したにも関わらず,早期診断がなされなかった.髄膜炎加療中に,左錐体路徴候が出現し,拡散強調画像にて右放線冠に高信号および右中大脳動脈の狭窄を認め,血管炎の合併が考えられた.続発性血管炎の標準的な治療は定まっていないが,ステロイドパルス療法が著効した報告例がいくつかあり,本症例も報告例に準じてステロイドパルス療法を行った.2回のパルス後に意識障害及び錐体路徴候は改善し,虚血病変は局所的に止ったが,認知症の状態を残した.

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© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
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