日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
運動習慣を有する高齢女性における転倒リスク
菊地 令子神崎 恒一川島 有実子岩田 安希子長谷川 浩井形 昭弘鳥羽 研二
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2008 年 45 巻 5 号 p. 526-531

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抄録

目的:転倒予防は寝たきりを予防するために重要である.我々は鳥羽らが作成した「転倒スコア」を用いて,運動習慣を有する60歳以上の女性を対象に,転倒リスクを縦断的に調査した.方法:対象はシステム三井島体操会員のうち,60歳以上の632名の女性(65.0±4.3歳).同一集団について年齢,過去1年間の転倒歴の聴取,転倒スコアの調査を2004年と2005年の2回行い,経過中の転倒を規定するリスク要因をロジスティック回帰で検討した.結果:2004年の転倒は134人(21.2%),2005年の転倒は121人(19.1%)に認められ,2005年の転倒率は60歳代では低下したが,70歳代ではむしろ増加した.また,6年以上10年未満の体操会員で転倒歴は最も低かった.2005年の転倒を従属変数としたロジスティック回帰分析では,年齢,2004年の転倒歴,「つまずくことがある」,「タオルを固く絞れない」,「急な坂道を使用している」の5つが有意な独立因子であった.さらに,2004年の転倒歴がない群ではロジスティック回帰分析によって,年齢,「つまずくことがある」の2項目が,転倒歴がある群では,年齢,「つまずくことがある」,「タオルを固く絞れない」,「急な坂道を使用している」,「内服薬が5種類以上ある」の5項目が有意な転倒予測因子であった.結論:運動習慣を有する高齢者女性は,6年以上10年未満の運動歴をピークとして転倒抑制効果が認められるが,加齢に伴い,70歳以上ではその効果は認められなくなる.また,年齢,過去の転倒歴,転倒アンケートは将来の転倒の有意な予測因子である.

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© 2008 一般社団法人 日本老年医学会
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