日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
腎機能低下は特定高齢者の身体機能に影響するか―推算糸球体濾過量(eGFR)に基づく検討
奥野 純子戸村 成男柳 久子金 美芝大蔵 倫博田中 喜代次
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2009 年 46 巻 1 号 p. 63-70

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抄録

目的:転倒は介護を要する主要な要因であり,血清ビタミンD不足や腎機能低下と関連があると報告されている.わが国における要介護予備群である特定高齢者の腎機能低下と体力との関連についてはほとんど知られていない.そこで,推算糸球体濾過量(estimated Glomerular Filtration Rate:eGFR)から求めた腎機能とビタミンD·身体機能との関連を検討することを目的とした.方法:平成18年6月から平成20年1月までの介護予防運動教室に参加した茨城県Y町とS市(いずれも北緯36度)に在住の65歳以上の特定高齢者109名(平均年齢75.8±5.2歳)を対象とした横断研究である.質問紙による面接調査,血液検査(血清intact parathyroid hormone,25-hydroxyvitamin D,1,25-dihydroxyvitamin D,クレアチニン)を実施した.eGFR(ml/min/1.73 m2)は改定MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)簡易式を用いて算出した.体力測定項目はTimed Up & Go,5 m通常歩行,長座体前屈,ファンクショナルリーチ(FR),開眼片足立ち,タンデムバランス,握力である.結果:過去1年間の転倒歴有り59.6%,つまずき歴有り75.2%であった.平均eGFRは68.0±14.1 ml/min,約30%がeGFR<60 ml/minであった.eGFRは年齢,iPTHと有意な負の相関を,1,25(OH)2D,タンデムバランスと有意な正の相関を示した.eGFR≥60 ml/min群はeGFR<60 ml/min群に比べ,FR·開眼片足たち·タンデムバランスが有意に優れていた.重回帰分析の結果,開眼片足たちに1,25(OH)2D,FRとタンデムバランスにeGFRが関連していた(それぞれβ:0.28,0.19,0.29).結論:eGFRとバランス機能は関連があることが示唆された.バランス能力を考慮する際,腎機能の把握も重要である.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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