日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
第51回日本老年医学会学術集会記録〈シンポジウムII:地域医療は高齢者医療:問題点と対策〉
1.離島·へき地医療からみえる地域医療再生のヒント
八坂 貴宏
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2009 年 46 巻 6 号 p. 496-499

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抄録

近年,全国的に医師不足·偏在が顕著となり,長崎県の離島においても平成16年の人口10万人当たり医師数は,本土と比較して最大3倍もの格差がある.しかし,このような状況にあっても,長崎システムといわれる離島医療政策が長年実行され,島民医療の確保がなされてきた.その仕組みとして,(1)離島医療体制の構築:長崎県離島医療圏組合から長崎県病院企業団へ,(2)医師養成制度:医学修学資金貸与制度と自治医科大学派遣制度,(3)医師育成,人事制度:医師の再研修·再々研修制度と人事配置委員会,(4)24時間医療支援体制,救急ヘリコプター搬送システム,(5)長崎県離島医療医師の会(もくせい会)の設立があげられる.これらの取り組みをヒントとして,今後の地域高齢者医療に必要なものは何であるか,また地域医療再生のためにどうすればよいのかを検討した.
離島·へき地の高齢化率は日本の10∼15年先を行っており,これらの地域で医療を展開するには,多彩な疾患の管理,生活状態の把握や介護の検討など,より幅の広い社会医学的知識,技術が要求され,いわゆる全人的医療が必須である.また,元気老人を増やし,ぴんぴんころり(元気で生活できる期間を長く)を目指すには,日ごろからの生活管理,疾病予防が不可欠である.これを実践できる総合医の育成が,まさにこれから超高齢化社会を迎える日本の医療を支えることになろうと思われる.
これからの地域医療を支えるためには,(1)医師,特に地域総合医を増やす.(2)地域医療のやりがいを伝え,地域に医師を呼び込む.(3)地域で医師を育て,キャリアアップできる仕組みを作る.(4)地域で疲弊しない支援体制をつくる.(5)地域基幹病院を拠点にした医療体制を構築する.ことを提言する.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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