日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
46 巻, 6 号
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第51回日本老年医学会学術集会記録〈会長講演特別企画:社会が求める老年医療への展開―高知大学老年病科の軌跡―〉
  • 松林 公蔵
    2009 年 46 巻 6 号 p. 480-484
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
  • 島田 和幸
    2009 年 46 巻 6 号 p. 485-487
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
  • 大塚 邦明
    2009 年 46 巻 6 号 p. 488-492
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    目的:7日間連続24時間自由行動下血圧(ABP)を記録し,ABPの日差変動と加齢との関連性を検討した.方法:40∼79歳の地域住民514名に,携帯型血圧計TM2430を用いて7日間連続ABPを記録し,6日間以上の記録が得られた450例(平均年齢58.8歳,男186例,女264例)を,50歳未満の91例(平均年齢41.8歳),50歳∼64歳の192例(平均年齢57.5歳),65歳以上の167例(平均年齢69.5歳)の3群に分類し,ABPの立場からの高血圧診断の日差変動と年齢との関係を,χ2検定にて解析した.ABPの立場からの高血圧診断として,(1)ABP平均値からの診断と,(2)夜間血圧下降度からの診断を実施した.ABP平均値が130/80 mmHg以上である場合を高血圧と定義し,(1)持続性正常血圧,(2)第1日目が正常血圧であったにもかかわらず2日目以降に高血圧が観察される仮面高血圧,(3)第1日目が高血圧であったにもかかわらず,2日目以降に正常血圧が観察される間歇性高血圧,(4)持続性高血圧に分類した.dipping ratioが10%未満をnon-dipperと定義し,(1)persistent dipper,(2)第1日目がdipperで2日目以降にnon-dipperを認めるmasked non-dipper,(3)第1日目がnon-dipperで2日目以降にdipperが観察されるintermittent non-dipper,(4)persistent non-dipperに分類した.結果:40歳∼49歳,50歳∼64歳,65歳以上の各群で,仮面高血圧と間歇性高血圧を呈する住民の頻度は27.5%,39.6%,47.3%,masked non-dipperとintermittent non-dipperを呈する住民の頻度は,55.0%,59.5%,69.7%を占め,高齢であるほど日差変動が大であった(p<0.01).結論:高齢者ではABPに日差変動が大きく,高齢者の高血圧診断と治療評価にABPを用いる場合には,ABP記録の再現性に関する十分な配慮が必要である.
  • 土居 義典
    2009 年 46 巻 6 号 p. 493-495
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
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第51回日本老年医学会学術集会記録〈シンポジウムII:地域医療は高齢者医療:問題点と対策〉
  • 八坂 貴宏
    2009 年 46 巻 6 号 p. 496-499
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    近年,全国的に医師不足·偏在が顕著となり,長崎県の離島においても平成16年の人口10万人当たり医師数は,本土と比較して最大3倍もの格差がある.しかし,このような状況にあっても,長崎システムといわれる離島医療政策が長年実行され,島民医療の確保がなされてきた.その仕組みとして,(1)離島医療体制の構築:長崎県離島医療圏組合から長崎県病院企業団へ,(2)医師養成制度:医学修学資金貸与制度と自治医科大学派遣制度,(3)医師育成,人事制度:医師の再研修·再々研修制度と人事配置委員会,(4)24時間医療支援体制,救急ヘリコプター搬送システム,(5)長崎県離島医療医師の会(もくせい会)の設立があげられる.これらの取り組みをヒントとして,今後の地域高齢者医療に必要なものは何であるか,また地域医療再生のためにどうすればよいのかを検討した.
    離島·へき地の高齢化率は日本の10∼15年先を行っており,これらの地域で医療を展開するには,多彩な疾患の管理,生活状態の把握や介護の検討など,より幅の広い社会医学的知識,技術が要求され,いわゆる全人的医療が必須である.また,元気老人を増やし,ぴんぴんころり(元気で生活できる期間を長く)を目指すには,日ごろからの生活管理,疾病予防が不可欠である.これを実践できる総合医の育成が,まさにこれから超高齢化社会を迎える日本の医療を支えることになろうと思われる.
    これからの地域医療を支えるためには,(1)医師,特に地域総合医を増やす.(2)地域医療のやりがいを伝え,地域に医師を呼び込む.(3)地域で医師を育て,キャリアアップできる仕組みを作る.(4)地域で疲弊しない支援体制をつくる.(5)地域基幹病院を拠点にした医療体制を構築する.ことを提言する.
  • 本田 宏
    2009 年 46 巻 6 号 p. 500-502
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 恒敏
    2009 年 46 巻 6 号 p. 503-507
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    きっかけ:2002∼03年に「医師名義貸し事件」が北海道に端を発し,東北地方,全国へと広がった.研究助成金問題も起きた.東北大では不祥事件を契機に医療が崩壊している地域·医療圏に医療システム構築の提言をし,大学も自らの責任を社会に対し明確にした.「地域医療教育開発センター」と「地域医療システム学(宮城県)寄附講座」が時限で設置され,医療政策,地域医療構築,についての調査,研究が行われた.調査·研究:日本は極端な医師不足である.人口当たり医師数はOECD加盟国中下から4番目,病床当たり医師数も最下位.日本には英米のナーシングホーム(日本の急性期病院並み)がなく,それらの病床がすべて病院病床となっている.医学部教員数も日本は欧米の3分の1.1990年から病院報告·医療施設調査による(届出)医師数が,医師調査を4万人も上回っている.医師の労働時間も平均で「週60時間を優に超える常態」である.結果·結論:ここまで崩壊した地域医療の解決策は取り敢えず,3項目に集約される.(1)不足する医師を増やす.(2)医師不足の医療圏にマグネットホスピタルを設置する.(3)包括的医師育成機構を都道府県単位で確立する.現状での必要医師数を独自に計算すると現状で45万人となる.医学部定員を2倍にしても20年もかかる.マグネットホスピタルとは400∼500床規模の若い医師を引きつける病院で,医師のための教育環境の整った三次救急にも対応する病院のことである.医師確保と医療の質維持のため人口20万人規模で一つ,設置が望ましい.もはや市町村に丸投げし非効率な病院設置は止めるべきだ.医師配置と長期的医師育成の視点から,大学と病院群と都道府県などが一体となって包括的医師育成機構を確立し,医師の異動を保証し,マグネットホスピタルばかりではなく,周辺の中小規模の病院への医師配置も考えるべきだ.
  • 倉本 秋
    2009 年 46 巻 6 号 p. 508-510
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
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第51回日本老年医学会学術集会記録〈パネルディスカッションIII:高齢者終末期における栄養を取り巻く諸問題〉
原著
  • 高尾 淑子, 岡安 みね子, 柳澤 裕之, 菊池 方利
    2009 年 46 巻 6 号 p. 528-536
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    目的:30年以上の当院通院歴を有する糖尿病患者を対象とし,糖尿病単純網膜症(SDR)発症に対する血糖変動と年齢の影響を検討する.方法:1969∼1977年に当院を初診し,初診時に網膜症を認めず,2006年以降も経過観察し得た糖尿病患者84例(男58例,女26例)を対象とした.血糖値,HbA1Cは来院日毎の全データを収集した.変動の指数として標準偏差(SD),変動係数(CV)および範囲(Range)を用いた.結果:SDR発症率は空腹時血糖値(FPG)のSD≥37 mg/dl(75%点)群が<37 mg/dl群に比べ有意に上昇した(Logrank P<0.0001).FPGの平均値,低血糖の有無,年齢,糖尿病罹病期間,高血圧,糖尿病治療法で調整したハザード比(HR)は2.64(95%CI:1.26∼5.50)であった.さらに,HbA1Cの平均値,HbA1CのSD,FPGの平均値,FPGのSDはそれぞれ,年齢,性,糖尿病罹病期間,低血糖の有無を調整後,SDR発症の有意なリスク因子であった.多変量解析にてHbA1Cの平均値とFPGのSDはSDR発症の独立した有意なリスク因子であった.また,初診年齢と糖尿病推定発症年齢はSDR発症リスクを減少させる有意な因子であり,SDR発症率は初診年齢≥42歳(50%点)群が<42歳群に比べ有意に低下した(Logrank P=0.0074).FPGの平均値,性,糖尿病罹病期間,高血圧,糖尿病治療法で調整したHRは0.53(0.30∼0.93)であった.≥42歳群は<42歳群に比べFPGの平均値,SDおよびCVが有意に低値であった.SDR発症年齢のピークは50歳代であり,それ以降,SDR発症者数は減少した.結論:糖尿病患者におけるSDR発症リスクは,HbA1CやFPGの平均値だけでなく,それらの変動が大きくなるほど上昇し,高齢になるほど低下した.また,初診年齢42歳以上群では42歳未満群と比べSDR発症が有意に抑制された.その要因として,42歳以上群ではFPGの平均値に加え,その変動が小さいこと,且つSDRの好発年齢を過ぎた症例が多く含まれることによる影響が示唆された.
  • 山内 恵史
    2009 年 46 巻 6 号 p. 537-540
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    目的:インスリン自己注射アンケート調査を行うことによって高齢者におけるインスリン自己注射の問題点を解明することを試みた.方法:インスリン自己注射中の2型糖尿病外来患者194名(65歳以上83名)に対し,自己注射において必要とされる手技を中心としたチェックリストを用い確認指導を個別に実施し,自己注射手技の問題点を断面的に検討した.結果:約3分の2に何らかのエラーが見られたが,年齢別分布では年齢による傾向はみられず,65歳以上の高齢者群とそれ以下の前高齢者群で比較しても全く差がなかった.年齢によるエラーの増加はみられなかったが,指導後の再チェックにおいて,高齢者において再エラーが多かった.結論:年齢や罹患歴に関わらず定期的な手技確認を行う必要がある.さらに高齢者においては確認後早期に再点検の必要性が高いと考えられた.
症例報告
  • 斉藤 竜平, 赤尾 浩慶, かせ野 健一, 野村 祐介, 北山 道彦, 津川 博一, 梶波 康二
    2009 年 46 巻 6 号 p. 541-544
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性.慢性心房細動にて,2003年5月よりワルファリン投与開始.2.0 mg/日でPT-INR:1.6∼2.2で安定していた.最終のPT-INRは2008年5月26日の1.58であった.同年5月末より全身倦怠感,食欲低下を認めたが,近医にて明らかな異常を認めず自宅療養にて経過観察していたところ,血尿を認めたため,6月4日当科外来を受診.PT-INR 12.88と著明な延長を認め,ワルファリン内服を中止のうえ,入院となった.入院時貧血と尿路感染症(E. coli)および低アルブミン血症(Alb:2.2 g/dl)以外には異常は認めなかった.PT-INRの正常化により血尿は消失し,抗生剤治療で尿路感染症の改善を認めた.その後,全身倦怠感の消失とともに食事摂取量は増加し,低アルブミン血症も改善した.最終的に従来と同様の2.0 mg/日内服にて,PT-INR 1.8程度で安定した.本症例は内服コンプライアンスに問題はなく,経過中にワルファリン作用を増強させる薬物の併用,肝·腎障害,悪性腫瘍,甲状腺機能異常は認めなかった.尿路感染症による急性炎症反応と食欲低下によって引き起こされた低アルブミン血症が遊離ワルファリン濃度を上昇させたことが高度のPT-INR延長に関与したと考えられた.一般に,高齢者は体内薬物動態(吸収,分布,肝臓での代謝,VitK依存性凝固因子合成能,腎排泄)の低下に加え,感染や脱水等急激な体内環境変化への反応性が減衰しており,ワルファリン投与に際して注意深いモニタリングが必要であることが示唆された.
  • 高橋 貞夫, 銭丸 康夫, 鈴木 仁弥, 宮森 勇
    2009 年 46 巻 6 号 p. 545-550
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,家族性高コレステロール血症合併2型糖尿病の女性.アトルバスタチン40 mg/日,イコサペント酸エチル1,200 mg/日,コレスチミド1 g/日,プロブコール500 mg/日内服にて,LDL-C 181.2 mg/dlとLDL-C値低下が不十分のため,コレスチミドを4 g/日まで増量したところLDL-C 148 mg/dlへの改善が認められ,胸痛発作の訴えも消失した.コレスチミドの増量によるLDL-C値低下に加え,HbA1c値の約2%の低下(10.7%から8.7%)が認められた.さらに,コレスチミドの短期間の中止によりLDL-C値の増加と血糖コントロールの悪化(LDL-C 211 mg/dl,HbA1c 9.7%)が出現し,コレスチミド4 g/日の再開により改善された.コレスチミドは本来のLDL-C値低下作用に加え,血糖コントロール改善作用を併せ持つ薬剤であることが確認された.
  • 本多 正幸, 森川 鉄平, 山口 泰弘, 谷 真理子, 山口 潔, 飯島 勝矢, 秋下 雅弘, 深山 正久, 大内 尉義
    2009 年 46 巻 6 号 p. 551-556
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    超高齢男性に発症した原発性滲出液リンパ腫の一例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は糖尿病を合併する90歳男性.高度のAlzheimer型認知症のため寝たきりとなり経管栄養を受けていた.数日前から発熱が続くため近医受診したところ,胸部レントゲン写真上,片側性の大量胸水が認められたため,当科に緊急入院となった.胸水の塗抹細胞診標本にてclass Vの形質細胞様異型リンパ球が孤立散在性に認められた.しかし,胸水細胞のフローサイトメトリーでは,モノクローナルな細胞増殖が確認されず,炎症性変化としても矛盾しない所見であった.全身状態を鑑み,積極的な精査加療は施行せず,呼吸不全が進行し第45病日に死亡した.病理解剖の結果,右胸腔以外の諸臓器には腫瘍性病変は認められず,右胸水サンプルから作製したセルブロック標本の免疫染色において,CD30陽性,ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)関連タンパク陽性の腫瘍細胞が認められ,PCR法によるDNA解析においてもHHV-8 DNAが検出された.また,免疫グロブリン重鎖可変領域に対するPCRによる解析では,免疫グロブリン重鎖遺伝子のモノクローナルな再構成が認められたことより,B細胞系のリンパ腫であることが明らかとなった.これらの所見より,原発性滲出液リンパ腫(PEL)の診断に至った.PELは,体腔内で腫瘍塊を形成することなく増殖する,HHV-8に関連した稀な悪性リンパ腫の亜型である.本疾患は後天性免疫不全症候群などの免疫不全状態の患者に発症することが多いが,本症例のような高齢者での発症もみられる.原因不明の胸水を示す高齢者において考慮すべき疾患のひとつとして,今後さらにその重要性が増すと思われる.
  • 里村 元, 小林 義雄, 神崎 恒一, 八反丸 美喜子, 田中 政道, 佐藤 道子, 守屋 佑貴子, 井上 慎一郎, 長谷川 浩, 鳥羽 研 ...
    2009 年 46 巻 6 号 p. 557-561
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/02/08
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性で,もの忘れを主訴として2006年に杏林大学付属病院もの忘れセンターを受診し,脳血管性認知症の診断にて加療されていたが,2007年にもの忘れ症状が進行し,認知機能検査値の低下も認められた.また,発語も復唱で字性錯語や吃音の出現も認めた.治療として塩酸ドネペジル5 mg/日の内服を開始したが,経過中にII型呼吸不全を合併し,神経所見から運動ニューロン疾患を疑い,針筋電図を施行した結果,下位運動ニューロンの脱神経所見を認めたことから,運動ニューロン疾患を伴う前頭側頭型認知症の診断に至った.以上,本例は短期記憶障害で発症した後,非流暢性失語をきたし,II型呼吸不全を発症して初めて運動ニューロン疾患を伴う前頭側頭型認知症と診断された症例である.
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