日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
t-PAを使用した高齢脳梗塞患者の検討
三瀧 真悟安部 哲史白澤 明松井 龍吉豊田 元哉ト蔵 浩和山口 修平
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キーワード: 脳梗塞, t-PA, 高齢者, ASPECTS-DWI
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2010 年 47 巻 1 号 p. 58-62

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抄録

目的:t-PAを使用した75歳以上の高齢患者における,効果,予後,副作用につき検討する.方法:2005年10月から2009年3月までに島根大学神経内科でt-PAを使用した30例(男性19例66.7±3.4歳,女性11例81.0±2.6歳)を対象とした.75歳以上群と未満群に分類し,病型(以下の3群に分類した:ラクナ梗塞,アテローム性梗塞,心原性塞栓),治療効果,出血性副作用,および退院時mRSにおよぼす因子を検討した.結果:t-PAを使用した30例のうち75歳以上の患者は57%を占める17例であった.病型はラクナ梗塞0例(0%),アテローム性梗塞6例(35%),心原性塞栓11例(65%)であった.75歳以下の患者群との比較では,NIHSSの改善度において有意差はなく(p=0.66),同等の治療効果が認められた.しかし75歳以上群では退院時予後良好例(mRS0-2)は有意に少なく(p=0.02),多変量解析でも年齢は予後不良に有意に影響する因子(p=0.04,95%CI 1.03~1.44 OR1.2)であった.また前方循環系梗塞において予後不良例が有意に多かったが(p=0.03),ASPECTS-DWI(Alberta Stroke Programme Early CT Score-Diffusion Weight Imaging)にて8点以上例では両群間で予後に差は認めなかった.出血性副作用に関しては2群間に差は認めなかった.結論:75歳以上の高齢患者に対しても,t-PAの効果は認められたが,退院時予後は有意に悪かった.しかし,発症時に虚血範囲が狭い例では,75歳以下群と同様の予後改善効果が期待できることが示唆された.

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© 2010 一般社団法人 日本老年医学会
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