日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
認知症の人の看取りにおける医療と介護の連携に関する研究―医療法人と社会福祉法人運営のグループホームへのアンケート調査より―
小長谷 陽子
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2010 年 47 巻 5 号 p. 452-460

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抄録

目的:介護保険制度の施行後,認知症高齢者の施設利用が増えるとともに,グループホーム(GH)における看取りも増加している.GHでの看取りにおいては医療と介護の連携が重要である.運営母体の違いによって,看取りの経験や意識等に差があるかについて,医療法人運営GHの医療スタッフおよび社会福祉法人運営GHの介護スタッフに調査をした.方法:全国のGHのうち,医療法人が運営する1,535のGHの医療スタッフと,社会福祉法人が運営する2,022のGHの介護スタッフに郵送でアンケートを行った.内容はGHの施設数,法人の入院施設の有無(医療法人GH)あるいは協力医療機関の医師の定期的な来所(社会福祉法人GH),協力病院や主治医について,急変時や看取りのマニュアルの有無,看取りへ協力するか否か,その理由,これまでの看取りの経験とその評価,今後の看取りに対する意見等である.結果:回収率はそれぞれ,55.2%,59.6%であった.施設数はいずれの法人のGHでも1施設が最も多かった.入所時の主治医の選択は利用者や家族の希望に沿う場合が多かった.GH内での看取りは医療法人GHの50%以上,社会福祉法人GHの30%以上が協力するとした.看取りの経験は医療法人GHでは38.0%,回数は2~4回が最も多く,社会福祉法人GHでは30.1%であり,回数は1回が最多であった.結果についてはいずれのGHでも概ねよかったと答えた.医療法人GHでは,法人に入院施設がある場合の方が,看取りへの協力,経験有りの割合が,入院施設がない場合より高かった.社会福祉法人GHにおいても医師の定期的来所の有無により,看取りへの協力や経験に差がみられた.結論:GHにおける看取りでは介護と医療の連携が欠かせず,特に医療職の協力が重要である.GHの職員に対し,看取りに関する教育の必要性が明らかとなった.

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© 2010 一般社団法人 日本老年医学会
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