抄録
目的:悪性腫瘍を合併した急性期脳梗塞症例を悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞と悪性腫瘍との関連性が低い脳梗塞に分類し,悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞の特徴を明らかとする.方法:観察期間は2006年1月~2009年3月.対象は急性期脳梗塞で当施設にて入院加療し,過去に悪性腫瘍と診断された症例と脳梗塞加療中または脳梗塞診断後1年以内に悪性腫瘍を新たに診断しえた症例とした.ただし脳梗塞発症から5年以上前に悪性腫瘍の治療がなされ,脳梗塞発症前5年以内に悪性腫瘍の再発,転移,治療歴を有さない症例は除外した.選択基準に合致した28例についてTOAST分類に準じて脳梗塞病型分類を行い,さらに悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞と悪性腫瘍との関連性が低い脳梗塞に分類した.結果:年齢中央値74歳(56~91歳),男性19名(68%).脳梗塞病型はSmall-vessel occlusion 3例(11%),Large-artery atherosclerosis 5例(18%),Cardioembolism 8例(28%),Stroke of other determined etiology 5例(18%),Stroke of undetermined etiology 7例(25%)であった.悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞は8例(29%)に認められ,悪性腫瘍の進展度が高い症例に多いことが示唆された.悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞では悪性腫瘍との関連性が低い脳梗塞に比べD-dimer値は高い傾向を示した.結論:悪性腫瘍との関連性が高い脳梗塞は75歳未満の群で進行癌の症例に多く,D-dimer値はこの分類において有用である可能性が示唆された.