抄録
加齢とともに増加する糖代謝疾患のより効果的な予防法と治療法の開発にむけて,加齢に伴う変化を臓器レベルで解明することは重要である.しかし,この点をヒトで検証することは困難であり,モデル動物を用いた解析が重要となる.我々はこれまで2種類の近交系自然発症モデルを用いて検討を行ってきた.Nagoya-Shibata-Yasuda(NSY)マウスは年齢依存的にインスリンの抵抗性と分泌障害を呈し2型糖尿病を発症する.本系統の加齢に伴う代謝変化は幼少時のカロリー制限を含む環境因子によって修正しうること,あるいは感受性遺伝子座の糖代謝への影響は週齢によって異なることを明らかにしてきた.Fatty Liver Shionogi(FLS)マウスは非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)を発症する.本マウスの肝臓ではVLDL分泌低下による脂質蓄積に引き続き炎症と線維化を来すこと,またこれらの病変はVLDL分泌の鍵となるmicrosomal triglyceride transfer protein(MTP)の肝発現誘導により改善すること,さらに本マウスの耐糖能は時期により2つの相を有しており,6カ月齢まではインスリン感受性の低下に基づき年齢依存的に悪化し糖尿病を発症するが,その後は膵β細胞量とインスリン分泌能の増加による軽快(寛解)がみられることを明らかにしてきた.これらの結果より,加齢に伴う代謝変化はそれぞれ異なった時期に増悪を示す各臓器の機能障害の統合的な総和として発症することが示された.