日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
大都市在住高齢者の精神的健康度の分布と関連要因の検討.要介護要支援認定群と非認定群との比較
井藤 佳恵稲垣 宏樹岡村 毅下門 顯太郎粟田 主一
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2012 年 49 巻 1 号 p. 82-89

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抄録

目的:大都市在住高齢者を対象として,精神的健康度の分布と,要介護要支援認定群・非認定群それぞれの関連要因について検討した.方法:東京都A区在住の65歳以上の全高齢者のうち,4月~9月生まれで,高齢者施設入所中の者を除く3,905人を対象に,郵送法による自記式アンケート調査を行った.アンケートは社会人口統計学的要因と健康関連要因に関する質問項目で構成される.精神的健康度の測度には日本語版WHO-5を用い,13点未満を精神的健康度不良と定義した.結果:2,431人から調査票を回収し(回収率63.5%),日本語版WHO-5に欠損値のない1,954人を解析対象とした.日本語版WHO-5の平均±標準偏差は15.61±6.08,精神的健康度不良の出現頻度は29.5%だった.要介護要支援認定の有無により層別化し,多重ロジスティック回帰分析を用いて精神的健康度の関連要因を検討した.認定群では小さいソーシャルサポート・ネットワーク,心疾患,日中の眠気が,非認定群では,低い教育年数,小さいソーシャルサポート・ネットワーク,不良な主観的健康感,日中の眠気,もの忘れの不安が,それぞれ独立に精神的健康度不良と関連した.非認定群の,性による層別分析では,男女いずれも小さいソーシャルサポート・ネットワーク,不良な主観的健康感,もの忘れの不安が精神的健康度不良と独立に関連した.結論:地域在住高齢者の精神的健康度の向上のためには,認定群ではソーシャルサポート・ネットワークが小さい人,日中の眠気がある人で,精神保健的介入ニーズを考慮する必要がある.非認定群では,ソーシャルサポート・ネットワークが小さい人,主観的健康感が不良である人,もの忘れの不安がある人において,精神保健的介入ニーズを考慮する必要がある.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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