日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
軽度認知症患者の口腔状況と口腔管理方法の構築への試み
角 保徳小澤 総喜道脇 幸博鷲見 幸彦鳥羽 研二
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 49 巻 1 号 p. 90-98

詳細
抄録

目的:誤嚥性肺炎の予防やQOLの維持の観点から,認知症患者の口腔管理を行うことは極めて重要な課題である.しかし,軽度認知症患者の口腔内状態や口腔ケアの状況などについては十分に明確にされていない.軽度認知症患者の口腔内の状態,口腔ケア実施状況の調査および口腔ケア指導による効果について検討し,口腔管理方法を構築することを目的に検討を行った.方法:対象者は,当院神経内科に通院している軽度のアルツハイマー型認知症患者10名(66~85歳)である.方法は,口腔清掃,義歯についてアンケート調査および口腔内診査を行った後に,本人と介助者に口腔衛生指導を行い,通院日に合わせ(1)初診時,(2)約3カ月後,(3)約6カ月後の合計3回,口腔清掃状態の変化,清掃方法の理解度の変化を調査した.結果:軽度認知症患者に口腔衛生指導を行ったものの,歯垢指数,歯肉炎指数ともに経時的に有意な改善は認めなかった.アンケート調査結果では患者の認識には大きな経時的な変化はなかった.結論:軽度認知症患者においても本人による口腔管理は困難なため,認知症発症前の中年期からの口腔管理の習慣化に加えて,認知症発症初期からの家族による口腔管理の導入と早期からの歯科医療担当者による介入により口腔環境を維持・改善していくことが必要と考える.

著者関連情報
© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top