日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
〈Aging Science Forum:アルツハイマー病研究のup-to-date〉
3.神経細胞死を標的とした治療法の研究
松岡 正明
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2012 年 49 巻 3 号 p. 303-306

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抄録

我々の研究グループはアルツハイマー病(AD)の神経細胞死のメカニズムを解析するとともに,AD関連神経細胞死を抑制する内在性因子ヒューマニンを応用する治療法開発研究を行ってきた.神経細胞死のメカニズムとして,ADの神経細胞内のTGFβ2発現が高まっていること,そしてTGFβ2がAPPとの結合を介して神経細胞死を引き起こすことを見いだし,TGFβ2の高発現がADの神経細胞死の発生進行に寄与している可能性を提示した.またヒューマニン研究では,ヒューマニンの受容体を同定し,さらに一連の前臨床研究によりヒューマニン療法がTg2576マウスを含む検討した全てのADモデルマウスの認知症を改善すること,ならびにin vivoではヒューマニン療法が神経細胞死のみならず神経機能異常による認知症状も改善することを示し,ヒューマニン療法がADの有力な治療法である可能性を示した.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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