日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
〈若手企画シンポジウム1:老化・老年病の分子機構 細胞から疾患まで〉
5.老人性骨粗鬆症に関る分子機構と創薬応用
西川 恵三
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2012 年 49 巻 3 号 p. 314-317

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抄録

骨粗鬆症は,骨塩量の減少に伴い,骨折リスクが高まる全身性疾患であり,日常の生活動作(ADL)や生活の質(QOL)の低下に直結する.近年の高齢化社会を背景に,我が国での患者数は一千万人を軽く超えると推定されており,重大な社会問題となりつつある.加齢により生じる成長ホルモンや性ホルモンなどのホルモン系の機能低下は,骨粗鬆症を引き起こす大きな要因とされている1).近年,エストロゲン欠乏による骨代謝異常のメカニズムの理解は大きく進歩したが,老人性骨粗鬆症の分子機構はほとんど不明である.今回,筆者らの研究によって,間葉系細胞の分化を制御する転写因子Mafが加齢に伴い発現低下することが明らかとなったことから,老人性骨粗鬆症の発症機序には,Mafによる制御機構の破綻が関与することが考えられる.本総説では,筆者らの研究成果と最新の知見を合わせて,老人性骨粗鬆症の発症に関与する分子メカニズムを解説したい.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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