抄録
目的:本研究では,高齢期の歩行機能低下の原因の一つと考えられる側方への不安定要素が,座位においても左右方向への体幹機能に反映されるという仮説の下,高齢者の移動能力と座位での左右方向の体幹機能およびIADLとの関連を検討した.方法:対象者は,地域で自立生活を営む男性33名,女性102名計135名(平均年齢73.2±6.0歳)であった.測定項目は,座位での側方への体幹機能指標として試行したSeated Side Tapping test,移動能力として5 m通常歩行とTimed Up & Go test(TUG),LawtonのIADL評価尺度である.結果:(1)Seated Side Tapping testの分布は正規分布に従い(p=0.200),最小値3.1秒,最大値8.2秒,平均値5.0±0.9秒であった.また,TUGとの間に年齢補正後も有意な正の相関関係を認めた(r=0.46).(2)IADL自立群のSeated Side Tapping test平均値は男性4.8秒,女性4.8秒,IADL障害群では各々5.7秒,5.5秒を示し,男性で有意に遅延していた.年齢,性を調整したロジスティック回帰分析では,移動能力に比してSeated Side Tapping testのみがIADL障害の有意な関連因子であった.結論:座位における体幹の左右方向への俊敏な動きは,高齢期の移動能力およびIADL障害と関連する可能性が示唆された.本研究結果は,虚弱高齢者の安全な機能評価に寄与するものと考えられた.