目的:本研究は,成人男女1,488名を対象として,日本人のためのサルコペニアの参照値と体力及び心血管系疾患リスクおよびメタボリックシンドロームとの関係について検討した.方法:サルコペニアの参照値は,若年被験者における二重エネルギーX線吸収(DXA)法を用いた骨格筋指数の平均値マイナス1標準偏差を使用した.結果:DXA法によるサルコペニアとサルコペニア予備群の参照値は,男性が6.87 kg・m-2と7.77 kg・m-2,女性が5.46 kg・m-2と6.12 kg・m-2であった.サルコペニア予備群と正常群を比較したところ,男女ともサルコペニア予備群は全身の骨密度や脚筋力が有意に低かった.さらに,サルコペニア予備群は,体格指数や体脂肪率が正常群より有意に低いにもかかわらず,血中グリコヘモグロビン濃度や脈波伝搬速度が有意に高かった.さらに,年齢,除脂肪量,体脂肪率を共変量とした共分散分析(低筋量×メタボリックシンドローム)の結果,空腹時血糖値及び血中グリコヘモグロビン濃度(HbA1c)は,これらの相互作用に有意性が認められた.結論:日本人のサルコペニアは,糖尿病発症や動脈硬化に関連する可能性が示唆された.また,低筋量とメタボリックシンドロームの合併は糖尿病リスクを増強することが明らかとなった.