日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
都市在住の男性高齢者における運動―セルフ・エフィカシーに関連する要因分析
高井 逸史
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2012 年 49 巻 6 号 p. 740-745

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抄録

目的:運動習慣を形成し継続するには運動に対するセルフ・エフィカシー(以下,運動SE)を高めることが重要である.本研究の目的は都市在住の男性高齢者を対象に運動SEに影響する要因を検討し分析した.方法:分析の対象となったのは男性高齢者69名(平均年齢74.2±2.0歳)であった.調査内容項目は家族形態,外出頻度,転倒既往,運動行動の変容ステージ(以下,変容ステージ),運動SE,転倒に対する自己効力感(FES),うつ傾向(GDS),自覚的健康感,IADL(老研式活動能力指標),運動機能面(5 m最大歩行時間,Chair Stand Test;CST)であった.変容ステージ間の群間比較を行い,運動SEと他の調査項目の相関関係,運動SEを従属変数とし多重線型回帰分析(ステップワイズ法)を行った.結果:変容ステージ別に比較した結果,運動SE,FES,GDS(p<0.01),CST(p<0.05)が有意であった.運動SEを従属変数とし多重線型回帰分析(ステップワイズ法)の結果,FES,GDS,老研式活動能力指標が独立変数として有意であった.この3つの要因からなるモデルは運動SEの6割(調整済みR2=0.61)説明できることが示唆される.結論:運動継続によりFESの向上,GDSの減少といった精神的健康が得られ結果,運動SEの向上が示唆される.運動SEを促進するには行動変容法による介入のみならず,FES,GDSを評価し配慮することが必要であることと考える.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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