日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
CGAスクリーニングテストでみられた外来通院患者の下肢浮腫とその関連因子
深沢 雷太小山 俊一金高 秀和馬原 孝彦羽生 春夫岩本 俊彦
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2013 年 50 巻 3 号 p. 384-391

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抄録

目的:CGAスクリーニングテストで観察された下肢浮腫の頻度とその関連因子について臨床的に検討した.方法:対象は種々の慢性疾患で外来通院中の高齢者142名(平均年齢83.5歳,男性70名,女性72名)で,脛骨前面・足首(内果周囲)・足背の3部位で圧痕度(手指による圧痕)を評価(浮腫なし:0度,ごく軽微な浮腫:1度,圧迫解除後に圧痕を認める浮腫:2度,圧迫開始時より気付かれて深い圧痕を残す浮腫:3度)した.片脚の圧痕度の総合点を浮腫スコアとし,1点以下を浮腫なし群(対照群),2~3点で圧痕度2度以上がないものをごく軽度浮腫群,4点以上あるいは圧痕度2度以上あるものを浮腫群の3群に分類した.関連因子は基礎疾患,血管性危険因子,下腿静脈瘤の有無,服薬状況,生活状況,栄養状態,血液検査成績(総蛋白,Alb,BNP,D-dimer,eGFRなど)を3群間で比較し,下肢浮腫に関連する因子を検討した.結果:浮腫群は36名,ごく軽度浮腫群は19名あった.浮腫群では糖尿病,心房細動,下腿静脈瘤の頻度が対照群より有意に多く,服薬数,多薬例とともに服薬内容ではCCB,ARBが多かった.日中の活動性低下例,特に,座位生活を送る者,外出頻度の少ない者,移動能力が杖歩行の者が両浮腫群で有意に多かった.栄養状態では体重,下腿周囲長が浮腫群で有意に大きかったが,MNA-SFスコアに差はなかった.また,浮腫群では総蛋白,Alb値,eGFRが有意に低く,BNP値やその高値例の頻度が有意に高かった.多変量解析(回帰分析)の結果,糖尿病,下腿静脈瘤,日中活動性,低Alb血症が下肢浮腫に関連していた(R2=.365,p<.0001).結論:下肢浮腫は高齢患者の38.7%にみられ,その発症には糖尿病,下腿静脈瘤,日中活動性,低Alb血症が強く関わっていた.特に,座位生活による下肢浮腫は生活指導で改善する可能性があることから,これを評価するCGAの意義は大きい.また,浮腫があれば体重や下腿周囲長の増大を来たすため,栄養評価の際には注意を要する.

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© 2013 一般社団法人 日本老年医学会
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