日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
メマンチン塩酸塩(メマリー®)の中等度および高度アルツハイマー型認知症に対する長期投与時の忍容性ならびに有効性の検討
北村 伸中村 祐本間 昭木村 紀幸浅見 由美子
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2014 年 51 巻 1 号 p. 74-84

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抄録

目的:メマンチン塩酸塩(メマリー®)は本邦では2011年6月に発売され,中等度および高度アルツハイマー型認知症に対して使用されている.今回,2002年から2011年までに本邦で実施したメマンチン塩酸塩の種々の臨床試験の結果を集計して,メマンチン塩酸塩20 mg/日投与の長期忍容性と有効性を検討した.方法:2002年から2011年までに実施したメマンチン塩酸塩の臨床試験のうち,メマンチン塩酸塩を投与した702名の被験者を対象に,安全性およびMMSEの推移を検討した.結果:メマンチン塩酸塩の平均投与期間は798.1日,最長は3,373日(約9年3カ月)であり,52週ごとの投与期間別に集計した有害事象発現率は71.0~88.9%,副作用発現率は5.6~32.1%であった.有害事象,副作用ともに発現率と投与期間との間に関連性は認められなかった.また,長期投与に特有と考えられる副作用の発現は認められなかった.試験の途中で中止した主な理由は「有害事象」であったが,長期に及ぶ投与期間中では,加齢や原疾患の進行に随伴する有害事象の発現,および在宅介護環境の変化や原疾患進行に伴う施設入所による投与中止等,被験者の背景的な要因による有害事象や投与中止例が多く集積された.メマンチン塩酸塩を投与した被験者のMMSEスコアの推移は,過去に報告されたメマンチン塩酸塩未投与時のMMSEスコアの推移と比較して緩やかな低下であった.結論:メマンチン塩酸塩20 mg/日の長期投与時の忍容性に問題は認められなかった.また,MMSEスコアの推移を検討した結果では,メマンチン塩酸塩が長期に亘って認知機能の悪化を抑制する可能性が示唆された.

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© 2014 一般社団法人 日本老年医学会
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