日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
夜間頻尿にデスモプレシンが著効した高齢女性の1症例
栢森 健介藤谷 順子河内 正治
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2014 年 51 巻 1 号 p. 85-88

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抄録

高齢者の夜間頻尿は不眠や転倒のリスクであり,また介護負担ともなる.頻尿には神経因性膀胱,前立腺肥大,骨盤底筋筋力低下などさまざまな要因があるが,夜間頻尿には臥床による腎臓循環血液量の増加やバゾプレシンの日内変動の消失も指摘されている.今回我々は就寝前にデスモプレシンスプレーを使用することによって夜間頻尿が激減した一例を経験した.同症例では入院時より夜間頻尿があり,それによる本人のQOL低下は著しいものであった.また看護負担も大きなものであった.飲水制限や眠前導尿,抗コリン薬,ナイトバルンなど夜間頻尿に対して様々な対策を講じたがいずれも改善には至らなかった.就寝前にデスモプレシンスプレーの使用を開始してから夜間排尿回数が減少し,本人のQOLも著しく改善した.また周囲の看護負担も同時に軽減した.デスモプレシン使用は時として副作用に低ナトリウム血症を起こしうるが,今回経過中には認めなかった.夜間頻尿の各種治療に対して治療抵抗性のある場合,デスモプレシンスプレーの使用は治療の選択肢の1つになると考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本老年医学会
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