日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
認知症高齢者のアクティビティケアに対する看護職・介護職の評価基準の類型化
青柳 暁子西田 真寿美
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2014 年 51 巻 3 号 p. 264-270

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抄録

目的:日本の介護保険施設等では認知症高齢者の援助方法のひとつとしてアクティビティケアが注目されている.実践の現場では職員が各々の経験と認識に基づいて判断している現状がある.本研究では看護職・介護職が重要と認識するアクティビティケアの評価基準を類型化することによって,その特性を明らかにすることを目的とした.方法:中国地方5県に所在する全ての特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の看護主任および介護主任に郵送法による質問紙調査を実施し,657名を分析対象とした.調査は認知症高齢者に対するアクティビティケアの評価基準に関する項目について主観的な重要度を5段階尺度で回答を求めた.重要度の類似性を検討するため階層的クラスター分析と多次元尺度構成法(ALSCAL)を併用して分析した.結果:クラスターは1「快・安楽の状態」,2「自発性」,3「緊張状態の消失」,4「他者との交流」の4つに分類された.重要度の平均値は高い順からクラスター1(4.48),クラスター2(4.23),クラスター3(3.95),クラスター4(3.48)であった.2次元モデルにおいてはストレス値0.113,決定係数RSQ 0.948で良好な適合度が示された.次元1『複雑性』では,単純な表現から複雑な行為を表すクラスターが平均値の高い順に布置され,より単純な行為が重視されていた.次元2『開放性』では,中央付近とその下方にあるクラスター1と2の平均値が高く,上端のクラスター3と下方にあるクラスター4が低値であった.医療的な問題解決や高次の社会的な開放性よりも,個人の快・安楽や自発性などの個別的な開放性が重視されていた.結論:従来のアクティビティケアの目的別の分類のみでは把握できなかった4類型と2次元構造の抽出によって,評価基準の重みづけの方向性が明瞭となった.その主観的な重要度の認識には,行為の複雑性と個別的な開放性に着目し,視覚的なわかりやすさ,測定可能である汎用性を目安にしていると考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本老年医学会
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