日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドラインに沿って,胃瘻からの栄養補給法の中止を検討した1例
沖田 将人日下部 明彦秋葉 涼子八木 宏章田村 陽一
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 51 巻 6 号 p. 560-563

詳細
抄録

94歳女性,アルツハイマー型認知症の末期,寝たきり,意思疎通は不可能.胃瘻からの人工的水分,栄養補給法(以下,AHN)を行っている患者の娘からAHNの中止を求められた.そこで,日本老年医学会が発行した高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン(以下,ガイドライン)1にそって,約2カ月の時間をかけて複数医師の診察,家族,訪問看護師ステーション責任者,ケアマネージャー,訪問介護事業所責任者,訪問入浴事業所責任者,介護用具貸出事業所責任者と話し合いを重ねた末に,AHNの中止を決断した.その後患者はインフルエンザに罹患し,肺炎を併発したため,AHNは中止せずに肺炎発症から7日目に永眠した.今回の症例で,胃瘻を中止することが命を断ち切る心の葛藤に家族は悩まされることや意思疎通のできない患者の本人らしさをどのように引き出すのかの難しさをあらためて実感した.今までにガイドラインにそってプロセスをふみ,AHNの中止を検討した報告はなく,今後の課題などを考察して報告する.

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top