日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
超高齢社会の地域医療に対する医学生の意識調査:愛媛大学医学科1年生と5年生の比較
上本 明日香川本 龍一阿部 雅則楠木 智小原 克彦三木 哲郎
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 52 巻 1 号 p. 48-54

詳細
抄録

目的:超高齢化社会の到来に備えて,次世代を担う学生にとって将来決定に重要な因子は何であるか,地域医療に従事する医師を増加させるためにどのような教育が必要とされるかを探る.対象と方法:平成24年度に愛媛大学医学部医学科1年生109名,5年生99名,うち回答者数は1年生89名(男性52名,女性37名),年齢19±1歳(平均年齢±標準偏差,範囲18~21歳),回収率81.6%,5年生74名(男性48名,女性26名),年齢24±3歳(平均年齢±標準偏差,範囲22~36歳),回収率74%であった.調査方法はアンケート方式で,パーソナルデータ,将来の進路決定に関する項目,勤務地の決定因子,地域医療や医師不足に関する項目について検討した.結果:将来希望する診療科は,臓器別専門医,産婦人科,麻酔科,眼科を志望する割合は5年生で有意に多く1年生で少なかった.基礎医学者,外科は5年生で有意に少なく,1年生で多かった.進路決定の重要因子では,収入,勤務形態,診療科の雰囲気,先輩の薦めといった現実的な項目を重要視する割合は5年生では有意に多く,1年生で少なかった.他方,入学前に得た知識や仕事のやりがいという漠然とした項目を重要視する割合は,5年生では有意に少なく,1年生で多かった.地域医療の崩壊や医師不足といった問題に危機感を抱き,高齢化の進む離島や医師不足地域での勤務を可能とする学生の割合は5年生よりも1年生で多く,その差は有意であった.考察:地域医療・老年医学に従事する医師数の増加を図るためには,医学生の志望する診療科の細分化を踏まえた上で,学生が進路を決定する上で重要視する背景因子が地域医療・老年医学の分野においてどのように受け止められているかを見極める事が重要である事が示唆された.また地域医療・老年医学に関する学生への情報発信,臨床実習時間の増加が急務である事が示唆された.

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top