日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
パフォーマンステストである認知機能評価法“Trail Making Peg test”の妥当性と信頼性の検討
阿部 巧神藤 隆志相馬 優樹角田 憲治北濃 成樹尹 智暎大藏 倫博
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2015 年 52 巻 1 号 p. 71-78

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抄録

目的:新たに開発した,パフォーマンステストを用いた認知機能評価法“Trail Making Peg”(TMP)testの妥当性と信頼性を検討する.また,認知機能低下者を把握するための基準を作成する.方法:妥当性および基準作成の検討における対象者は,2009年から2012年にかけて開催された健診事業に参加した地域在住高齢者632名(73.3±5.2歳)とした.認知機能評価の妥当基準にはファイブ・コグ検査を使用し,当該検査の5要素合計得点を認知機能スコアとした.妥当性を検討するためPearsonの積率相関係数を算出した.さらに,TMPの測定結果に性差があるかを検討するため,年齢および認知機能スコアを共変量とした共分散分析を使用した.認知機能スコアが平均-1標準偏差以下に該当する者を認知機能低下者と定義した.ROC解析を用いて認知機能低下者を判別するためのカットオフ値を求めた.また,信頼性の検討は,2009年から2013年に開催された健診事業において,初めて参加した年から2年続けて健診事業に参加しTMPの測定をおこなった319名(73.1±5.2歳)を対象者とした.信頼性を検討するため級内相関係数(intraclass correlation coefficient:ICC)を算出した.結果:TMPと認知機能スコアの積率相関係数はr=-0.63であった.また,男女のTMPの測定結果に有意差はみとめられなかった(P=0.951).ROC解析の結果,AUC=0.855,認知機能低下者を判別するための感度は85%,特異度は69%であった.ICCを算出したところ0.746であった.結論:新たに開発した,パフォーマンステストである認知機能評価法TMPは十分な妥当性および信頼性を有することが確認された.また,TMPの測定結果に性差はないことが示唆された.TMPは,認知機能低下者を把握する方法として有用である可能性がある.

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© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
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