日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
大脳白質病変を伴う軽度認知機能障害患者の高齢者総合機能評価における特徴
小原 聡将長谷川 浩輪千 督高田中 政道佐藤 道子小林 義雄小柴 ひとみ永井 久美子山田 如子松井 敏史神﨑 恒一
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2015 年 52 巻 4 号 p. 399-410

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抄録

目的:血管性認知症は早期より介入を行うことで,発症や進行を抑制できる可能性があることから,治療可能な認知症と表現されることがある.特に大脳白質病変は,遭遇する機会の多い所見である.今回,認知症の前段階である軽度認知機能障害の時期に大脳白質病変の有無で,どのような症状・徴候が表れているかを明らかにすることを目的とする.方法:2013年1月1日から2014年1月31日までの期間に杏林大学病院もの忘れセンターを初診で受診した連続643例のうち軽度認知機能障害と診断され,特定の疾患に伴う白質病変を除外した181例を対象とした.これらに対し,問診および診察を行い,高齢者総合機能評価を施行した.全例でMRIを施行し,大脳白質病変をFazekas分類を用い評価,grade 0,1を明らかな大脳白質病変を有さない群,grade 2,3を明らかな大脳白質病変を有する群とし2群間で比較を行った.結果:明らかな大脳白質病変を有する群は年齢が有意に高く,性別,MMSE,野菜語想起には有意な差を認めなかったが,手段的ADLでは下位項目で低値を認め,転倒スコア21項目,Geriatric Depression Scaleでは,合計点,下位項目で高値であった.Dementia Behavior Disturbance Scale,Zarit Careburden Scaleは,下位項目で有意な差を認めた.結論:明らかな大脳白質病変の有無により,軽度認知機能障害の段階でADLの低下傾向,転倒の危険性,うつ傾向,行動変化の出現といった特徴の違いがあり,介護負担として反映している可能性が示唆され,この結果は,本人や介護者への説明,適切な介護へのアプローチや介入に有用であると考えられる.

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© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
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