日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
胃切後の嚥下性肺炎に内視鏡的胃管空腸留置が有効であった1例
田村 耕成戸塚 統田村 遵一
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2015 年 52 巻 4 号 p. 411-414

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抄録

症例は79歳男性.昭和62年に胃癌のため幽門側胃切除術を受けている.約1年前に腸閉塞で手術を行いその後より嚥下障害がみられ肺炎を繰り返すようになった.このため約半年前から経鼻胃管を留置し経腸栄養開始したが,嚥下性肺炎の再発を繰り返すため当院入院となった.入院後の所見等により経腸栄養の逆流による嚥下性肺炎と診断した.逆流防止のため頭位を常時30°以上に挙上し,経腸栄養を注入したが,注入速度が50 ml/hを超えると逆流,誤嚥がみられた.このため,経鼻内視鏡を用いながら経腸栄養チューブ先端を空腸内に留置したところ,留置当日に100 ml/hまで注入速度を速めても逆流や下痢等の症状認めず.その後徐々に注入速度を上げ,10日後には300 ml/hで注入可能となった.内視鏡的胃管空腸留置法は,経鼻内視鏡を空腸まで挿入し,内視鏡を通じてガイドワイヤーを留置.内視鏡を抜去後,ガイドワイヤーを通じて経腸栄養チューブを留置するシンプルな方法である.本法は内視鏡が使用可能な環境であれば容易に行うことが可能であること,また胃切後長期経過した高齢患者では,非胃切患者に比べて栄養の腸への注入が逆にスムーズに行える可能性があることなどから,高齢者医療の現場で有用な知見と考えられ報告した.

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© 2015 一般社団法人 日本老年医学会
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