日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
スモン検診患者における認知症有病率
齋藤 由扶子坂井 研一小長谷 正明
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2016 年 53 巻 2 号 p. 152-157

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抄録

目的:かつてスモン(SMON:subacute myelo-optico-neuropathy)患者には認知症は少ないと言われ,原因の一つにキノホルムのアミロイドβ凝集阻害効果が推測された.一方キノホルム中止後40年以上が経過し,スモン患者は高齢化し老年症候群である認知症の増加が予想された.そこでスモン後遺症をもつ高齢者の認知症の有病率,および現在のアルツハイマー病(以下ADと略す)発症に過去のキノホルム内服量が影響しているかを調査した.方法:対象は2012年スモン検診において,MMSEを解析しえた647例(男性195例,女性452例,平均年齢77.9歳)である.1次調査(MMSE)の結果23点以下は105例であった.2次調査:105例の認知症の有無と背景疾患を,検診を行った神経内科医あるいはかかりつけ医に質問した.次に検診のデータベースを用い「最も重度であった時のスモン症候の重症度」と現時点のAD合併との関連を解析した.結果:認知症の有病率の推定値は9.9%(95%信頼区間:7.3,12.7%),65歳以上に限定すると10.9%(7.9,13.8%)であった.認知症35例のうちADは25例,ADと血管性認知症の合併は4例であった.AD合併と過去に最も重度であった時のスモンの重症度との関連性は,視力障害,歩行障害のいずれにおいても認められなかった.結論:2012年スモン検診受診患者における認知症の有病率は9.9%(65歳以上では10.9%)で65歳以上地域住民(15%)に比べて低値であった.しかし本研究では,対象が検診患者のみでスモン全体を反映せず過小評価の可能性がある.従ってキノホルムのAD発症予防効果は言及できない.キノホルム量はスモンの重症度と関連するため,現時点のAD合併は過去に内服したキノホルム量と関連はないと推察した.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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