2016 年 53 巻 4 号 p. 354-362
目的:本研究の目的は,地域に暮らす高齢者が自分自身で認知機能や生活機能の低下に気づき,必要なサービス利用につながるようにするための自記式認知症チェックリスト(以下チェックリスト)を作成することにある.本研究では先行研究で因子的妥当性と内的信頼性を確認したチェックリストの併存的妥当性と弁別的妥当性を検証した.方法:特定地域に在住する65歳以上高齢者7,682名を対象に3段階の調査を行った(一次調査:郵送留め置き回収法による自記式アンケート調査,二次調査:看護師による訪問調査,三次調査:医師と心理士による訪問調査).併存的妥当性を確認するために,チェックリストの得点と心理検査得点のSpearman相関係数を算出した.弁別的妥当性を確認するために,チェックリスト総合得点の平均をClinical Dementia Rating(CDR)スコアの群間で比較し,Receiver Operating Characteristic(ROC)分析を用いて認知症の弁別力を検討した.結果:三次調査まで完了した131名を分析対象にした.チェックリストの得点は,Mini-Mental State(MMSE)およびFrontal Assessment Battery(FAB)の得点と有意に相関し(MMSE:r=-0.536,P<0.001;FAB:r=-0.457,p<0.001),CDR1以上群の平均得点はCDR0及びCDR0.5群より有意に高く,認知症(CDR1以上)と非認知症(CDR0または0.5)を有意に弁別した(曲線下面積AUC=0.75,95%信頼区間:0.62~0.89,P<0.01).両群を弁別する最適のカットオフ値は17/18で,感度72.0%,特異度69.2%であった.結論:チェックリストの併存的妥当性と弁別的妥当性が確認された.しかし,認知機能低下高齢者のスクリーニング・ツールとして使用するには弁別力が不十分であり,普及啓発用のツールとして使用することが推奨される.