日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
特別養護老人ホームに入居中の要介護高齢者の脱水前段階の身体徴候―腋窩皮膚温・湿度,口腔内水分量,唾液成分との関連―
奥山 真由美西田 真寿美
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2016 年 53 巻 4 号 p. 379-386

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抄録

目的:特別養護老人ホームに入居中の要介護高齢者の脱水症の前段階状態に関連する要因を,腋窩皮膚温・湿度,口腔内水分量,唾液成分との関連から検討した.方法:特別養護老人ホームに入居中の要介護高齢者78名(男性11名,女性67名,平均年齢86.6±7.3歳)を対象とした.本研究では,血清浸透圧値により2群に分類した.血清浸透圧値の基準値上限である292 mOsm/kg・H2O以上かつ脱水症の診断基準値300 mOsm/kg・H2O未満の者を境界域群とし,292 mOsm/kg・H2O未満の者を正常域群とした.調査項目として,基本属性(年齢,性別,自立度),BMI,食事形態,体重1 Kgあたりの1日水分摂取量,生理学的指標(血圧,脈拍,体温,腋窩皮膚温・湿度,体水分量,体水分率,内液率,外液率,血液成分,口腔内水分量,唾液成分),室内環境(室温・湿度)を測定した.統計解析は,境界域群・正常域群別の比較を行い,そのうち,血液成分を除く有意水準が0.05未満の変数を選択し,境界域群を目的変数とし,年齢,体重1 kgあたりの1日水分摂取量(25 ml未満/25 ml以上)を調整変数としてロジスティック回帰分析を行った.結果:単変量解析にて有意差のあった項目は,血清ナトリウム値,血清クロール値,血糖値,血清クレアチニン値,尿素窒素/クレアチニン比,腋窩皮膚温,部屋湿度であった.ロジスティック回帰分析の結果,最終モデルにおいて腋窩皮膚温(オッズ比:3.664,95%信頼区間:1.101~12.197,p=0.034)のみが有意な関連を示した.結論:腋窩皮膚温が1単位上昇するに伴い,正常域群に対して境界域群であるリスクが3.67倍であった.以上より,脱水症の前段階状態には,腋窩皮膚温が関連することが示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本老年医学会
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