日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
完全埋め込み型中心静脈ポート使用高齢者担がん患者における血流感染症
青田 泰雄奥田 優子渡辺 翼藤原 圭太郎中村 造横山 智央後藤 明彦櫻井 道雄
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2017 年 54 巻 1 号 p. 50-55

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抄録

目的:カテーテル関連血流感染症は重大な医療感染症の要因の1つである.中心静脈カテーテル関連血流感染症については,様々なサーベイランスや研究がなされているが,完全埋め込み型中心静脈ポート(CVポート)に関する臨床データ・疫学は十分ではない.そこで,今回我々は当院で何らかの理由でCVポートを抜去した担がん患者を対象として,血流感染症に関しての臨床的検討を行った.対象と方法:2014年5月から2016年4月の間に厚生中央病院総合内科において何らかの理由でCVポートを抜去した,担がん患者22例を対象とした.診療録を用いてretrospectiveに基礎疾患・留置期間・検出菌・転帰について検討した.結果:22例中,男性11例,女性11例であり,抜去時の年齢は中央値75.5歳(62~86歳).カテーテル先端培養で陽性を認めたのは6/22例(27.3%).グラム陽性球菌が5例で,グラム陽性桿菌が1例であった.また,Candida albicansの重複症例1例を認めた.培養陽性例の5/6例(83%)は死亡時の培養であった.逆に,死亡時に行われた培養については5/13例(38%)で培養陽性であった.対象症例全体では培養陽性と死亡・挿入期間に関しては相関性を認めなかったが,80歳以上の高齢者と培養陽性の間には相関性を認めた.また基礎疾患を造血器腫瘍に限ると培養陽性と死亡(p=0.04)および80歳以上と培養陽性(p=0.01)の間に相関性を認めた.考察:近年,CVポートは抗がん剤加療を必要とする担がん患者に挿入される機会が増えてきているがCVポート感染の存在は十分に認識されていない.観察を十分に行い,CVポート感染を疑った場合速やかな抜去が必要ではあるが,挿入後の抜去に関しては対象患者が高齢で全身状態が悪い場合抜去術自体が困難なことも感染を助長してしまう要因となっている.結語:医療施設におけるCVポート関連血流感染症のリスク評価は十分とは言えず,データの蓄積を行い,適切な評価と対応法を検討することが必要である.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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