日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者の高血圧と夜間睡眠中の覚醒との関係
青沼 亮子松田 ひとみ
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2017 年 54 巻 1 号 p. 56-62

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抄録

目的:地域在住高齢者の高血圧と夜間睡眠中の覚醒(以下夜間覚醒)との関係について検討した.方法:老人クラブに所属する地域在住高齢者(65歳以上)422人を対象に,基本属性,日常生活活動,睡眠状況,健康状態についての質問紙調査を実施した.研究参加者を高血圧群と非高血圧群に分類し,単純集計,相関関係の分析,ロジスティック回帰分析を行った.結果:回答が得られた200人(有効回答率47.4%)に対し,基本属性から健康状態までの各要因について高血圧群と非高血圧群を比較すると,肥満度(BMI)に有意差がみられた(p=.01).また,高血圧に影響する変数として,ロジスティック回帰分析によりBMI(OR=1.148,95%CI:1.022~1.289)と夜間覚醒回数(OR=1.449,95%CI:1.015~2.067)が見出された(モデルχ2検定p<.05).さらに高血圧群の夜間覚醒回数に注目すると,年齢とは正の相関関係(rs=0.232)であり,ボランティア活動とは負の相関関係(rs=-0.356)であった.結論:1)高血圧と夜間覚醒回数との関連性が見出されたことにより,夜間覚醒回数は,高血圧の高齢者において血圧値のNon-dipper型や睡眠の質が低下する問題を検討する変数として捉えられた.既に高血圧では夜間の血圧値のNon-dipper型と迷走神経の抑制との関係が報告されているが,夜間覚醒回数を加えた3要因を検討する必要性が示唆された.2)社会貢献性の高いボランティア活動は,高齢者の夜間の覚醒回数を減少させることから睡眠の質を高めている可能性がある.高齢者においてボランティア活動を普及させる根拠とするためには,今後の生理学的な検証が課題となった.

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