日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
総説
高齢慢性腎臓病患者の食事療法
宮岡 良卓菅野 義彦
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 54 巻 1 号 p. 1-9

詳細
抄録

慢性腎臓病(CKD)という疾患概念が徐々に浸透してきたが,わが国で広く用いられている推算GFR(eGFR)による診断ではこれまで腎機能の指標として用いられてきた血清クレアチニン値が正常範囲内の1.0 mg/dlだとしても多くの高齢者がCKDの範疇に入る.CKDはスクリーニング用の疾患名であるという一面もあるため,診断された場合に一度は専門医によって管理方針を定めることが望ましいが,専門医の数や偏在に伴い必ずしもすべての患者が受診できるわけではない.非専門医による管理の目安としてCKD診療ガイド2012が日本腎臓学会より提唱されているが,腎臓病の管理はさまざまな方向に配慮が必要であり必ずしも容易ではない.生活習慣病の一つとして食事療法も必要となるが非専門医が管理栄養士を伴わずに低たんぱく質食を一律に指導するのは危険がある.たんぱく質を減らす際にどうしても総エネルギーも減少してしまい,近年注目されているサルコペニアやフレイルの原因ともなりかねないためであるが,逆にこれらを防ぐためにたんぱく質摂取を増やしてしまうと,それは低下した腎機能に対して大きな負担となる.高齢者に何らかの介入をする場合には必ずリスクを伴うため,決して画一的な対応はできない.個々の患者によって,また同じ患者でも合併症の活動性や同居家族など生活全体の変化に対応して,生活指導を変化させるべきである.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top