日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
家族性アミロイドポリニューロパチーの1孤発例に対するタファミジスの使用経験
宮﨑 由道
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2017 年 54 巻 1 号 p. 75-80

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抄録

症例は71歳男性.30歳頃に肥大型心筋症(以下HCMと略す)と診断され,以来循環器内科にて通院加療を行っていた.68歳時より四肢末梢の冷感が出現,70歳時より四肢しびれ感と両足の脱力感,71歳時より歩行も困難となったため当科紹介受診となった.初診時両下肢で下垂足を認め,深部感覚は膝下より遠位で消失しており,腱反射は消失していた.神経伝導検査は軸索長依存性の軸索障害型感覚運動性多発ニューロパチーの所見であり,腓腹神経生検にてアミロイド沈着を認め,遺伝子検査にてATTR Val30Metの遺伝子変異が検出されたことから,トランスサイレチン型の家族性アミロイドポリニューロパチーと診断した.また神経症状出現時より心電図で低電位とI型房室ブロックが見られており,心筋生検にてHCMの所見に加えてアミロイド沈着を認めたことから,HCMの経過中に心アミロイドーシスを合併したものと考えた.タファミジス内服による治療を開始,1年の経過で四肢の筋力低下,感覚障害の明らかな進行は認めなかった.神経伝導検査では左尺骨神経の複合筋活動電位は低下を認めず,筋電図検査においても,左尺骨神経の支配筋である左第一背側骨間筋では,内服前には活発に認められた脱神経電位(線維自発電位,陽性鋭波)が,内服後1年での再検査では消失していた.しかしながら,左前脛骨筋では依然として活発な脱神経電位が確認された.心エコー検査では1年の経過で心機能の悪化を認めなかった.タファミジスがアミロイド沈着による神経障害,心機能障害に対し有効である可能性が検査結果からも示された.

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© 2017 一般社団法人 日本老年医学会
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